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5

生徒会長に正式に任命されてから、太陽はとても多忙な身となった。常に生徒会室と職員室、風紀室などに出入りしており、授業もほとんど出ていない。
初めのうちは引き継ぎや手続きなどで自分の時間などほとんど取れないものだ。もちろん、アキラとの逢瀬の時間も。

初めて一つになったあの日以降、二人は一度も顔を合わせてはいない。毎日のメールのやり取りと、電話。それだけが二人をつなぐ手段だった。

「なんかこうやって会うのが久しぶりのような気がするよ」

いつかの校舎裏で、アキラは野々宮と待ち合わせをしていた。アキラが呼び出したのだ。
『なあんか、ふんぎりがついたよ。』
会長選が終わったその日、野々宮はやけにすっきりとした顔でアキラの前に来てそう笑った。

「それで、どしたの?唐津から呼び出し何て珍しいね、薬師寺から俺に乗り換える気になった?」

ニヤニヤと笑いながら冗談をこぼす。

「ばぁか」

アキラは笑いながら、制服のポケットに手を入れた。そして、取り出したそれを野々宮に向かって投げる。咄嗟に野々宮は受け取り、手の中を確認した。
USBフラッシュメモリだ。

「なに?」
「餞別にやるよ。お前が俺に近づいて本当に手に入れたかったもの。俺の開発した新薬のデータだ。それでお前は自分の夢を掴めばいい」

野々宮はアキラの言葉に目を見開いた。

「なに…」
「…太陽から聞いた。あいつは全部知ってたんだな。お前がなぜそれを欲しがっていたのか。有効に使えよ。お前の未来…いや
お前の弟さんたちの未来のためにな」

そう言ってアキラはくるりと背を向け、その場を後にしようと一歩踏み出す。言葉を失い、呆然としていた野々宮がはっとしてアキラを引き止める。なぜ自分のためにそんな大事なものを、と問い詰めるよりも先に確かめることがある。

「ま、待てよ唐津!餞別って…」

アキラはゆっくりと振り向き、微笑んだ。

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