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3

書記、会計、副会長の順に演説が始まった。それぞれが自分の考えを一生懸命訴える。

そして、いよいよ会長候補の演説。初めに話すのは推薦候補の野々宮だ。

「みなさん、こんにちは」

軽い挨拶から入り、野々宮の口から言葉が紡ぎだされる。生徒会長になった暁には、自分はどのような改革を望んでいるか。会長職についてからの自分の軌跡など、俺についてきてほしいというような内容だった。

さすがというかなんというか。野々宮の演説は、まさに指導者。
盛大な拍手の中、野々宮が一礼して舞台袖に下がる。

ほどなくして、太陽が現れた。

「みなさん、こんにちは。薬師寺太陽です。これから俺が話すことは、立派なことじゃないし演説としてはふさわしくないかもしれない。それでも、どうか最後まで聞いてほしい。お願いします。」

ぺこりと、一礼する。

「…突然ですが、俺には好きな人がいます。お付き合いをしている、恋人です。」

マイクを通して放たれた言葉に、体育館中の生徒からざわめきが起こった。そりゃそうだ。何言いだすんだあいつ。

「その人は、俺より年上で。小さい頃からいつもいつも俺の側にいてくれた人です。俺は小さい頃、いじめられてました。よわっちくて、根性なしで。いつもいじめられては泣きながらその子に助けを求めてた。
その子はいつだって俺を助けてくれた。強くて、優しくて。俺にとってその子は何にも代えがたい一番大事なものだった。
…でも、この学園に来て。俺が、後を追いかけて入学して。バカな俺はその子に引っ付きまわってた。その子が大好きだったから。自分で言うのもなんだけど、俺はここで王子何て呼ばれてて。それが何を意味するかなんてちっとも分かってなかったんだ。
…俺のせいで、その子がいじめにあうなんて、少しも思わなかった」

太陽の話に、皆が黙って聞き入る。その話に、気まずそうに俯く生徒も多い。崎田もアキラの隣で眉を寄せ少し俯いていた。

「とある人から教えてもらうまで、気付かなかった。その子は、俺にずっと内緒にしてたんだ。とても強がりな子だから。きっと俺の為なんて思ってたんだと思う。…それを知った時に、思ったんだ。俺が、守ろう。強がらなくてもいいように、弱音を吐けるように。
この学園はとても特殊で、顔のいい奴には親衛隊が出来たりする。でも、本来の意味を間違えてるんじゃないのかな。
人を好きになる。そんなのは当たり前だし、自由だ。でも、誰がふさわしいとか、釣り合わないとかでいじめに合ったり別れさせられたりすることがある。そのせいで、好きなのに言えない、付き合っているのに堂々と愛し合えない。そんな恋人たちがここには大勢いるんじゃないだろうか。」

俯いていた生徒たちが顔を上げ、それぞれ色んなところに視線を投げている。その先には別の生徒がいて、見つめあったりしている。

「俺は、そんな学園にしたくない。好きなのに言えない。大事なのに守れない。一人一人が、皆大事に思っている人がいるなら。それを堂々と公言できるようにしたい。誰だって大事な人を自分の手で守りたいと思う。それを学園の皆が思ってくれたなら。きっと、この学園は変わる。
親衛隊だって、きっと初めはそんな気持ちで作り上げられたはずだ。自分の好きな奴に近づくやつを排除するためなんかに作られたものじゃない。その人を守るために作られたはずだから。
誰でも、強がらずに弱音を吐けるような学園にしたい。弱音を吐くやつを助けてやれるような学園にしたい。…皆少しづつ歩み寄ることができるような。ただの理想でしかないけれど。きれいごとだとは思うけれど。

大事な人を、大事な学園を守れるような生徒会長になりたいです。以上です」

一礼をして、太陽が下がる。

「かっこいいです」

崎田が微笑んでアキラに向かって言った。

「俺の惚れた男だからな」

アキラが太陽の去った壇上を見つめたままそう言った。

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