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翌日。候補者演説のため、学園の生徒全てが体育館に集められた。候補者が壇上に並び、周りからきゃあきゃあと黄色い声が上がっている。
アキラは一番後ろ、体育館の入り口にもたれていた。
「こんにちは」
ふと近くで声が聞こえ、顔を向ける。崎田だった。
「よう」
ひどくにこやかに話しかけてくる崎田に少し戸惑う。あの校舎裏での出来事から一か月。崎田と顔を合わせるのは久しぶりだ。あれから、崎田をはじめ一年生が嫌がらせをしてくることはほぼなくなった。崎田が太陽にもきちんと告白をして、その結果を皆に報告したのだろう。アキラは本気を認めてもらえたことに感謝した。
だが、このように話しかけられるとどう接していいのかわからない。ぎこちなく挨拶を返したアキラに崎田はにこりと微笑んだ。
「そんな気まずそうにしないで下さいよ。あなたに対してなにか思ってるとかはないですから」
「そっか。悪い」
アキラの謝罪にくすくすと笑い、壇上に視線をやる。アキラも崎田につられ、壇上を見た。
ちょうど野々宮と太陽がそれぞれ紹介され、礼をしてお互い握手を交わすところだった。
「ドキドキしませんか?どちらに軍配が上がるんでしょうね」
「…そうだな。」
でも、俺はただここで見守るだけだ。
壇上から視線を外すことなく言うアキラを見て、崎田がまた少し笑う。
見ててやるよ、太陽。
候補者演説が始まる。
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