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野々宮はアキラの顔を見てひどく驚いていた。
「なに、どしたのそれ。」
「ああ、ちょっとね。お前こそどうしたの?」
まさかこんなところに野々宮がいるなんて思わなかった。保険医不在なので勝手に消毒薬や絆創膏などを物色する。ふと目の前に影が差し、何事かと見上げるとすぐ目の前に野々宮がいた。
「びっくりした。なに?…っ」
顔を上げたと同時に首元に衝撃を感じ、アキラの意識は暗闇に吸い込まれていった。
「う…」
目が覚めて、きょとりと周りを見渡す。ええと、どうしたんだっけ。自分は確か保健室で…ここはどう見ても保健室ではない。ずいぶん埃っぽいなとまた周りを見ると、平均台やら跳び箱が目に入った。どうやら体育倉庫らしい。自分の寝ている場所がマットの上だと気付く。ゆっくりと起き上がろうとして体の異変に気付いた。
「な、んだ、これ」
腕が紐で縛られていた。目の前に縛られた腕を持ち上げて驚く。
「あ、目が覚めた?」
暗がりの中から声がして、目を凝らす。その人物はゆっくりと自分に近づいてきた。
「野々宮、なにこれ?どうしたの?」
「ん〜?…俺がやった。唐津を、捕まえようと思って。」
にこりと微笑んで傍にしゃがみ、野々宮はアキラの頬を撫でる。その目は、いつもの野々宮ではなかった。
「なんで…」
「…あいつに、ダメージを与えるため。今からね、唐津は俺に犯されるんだよ。」
一瞬何を言っているのかわからなくてきょとんとするアキラの服を、野々宮がボタンごと引きちぎる。
その白い肌が晒されると、野々宮は目を細めて口角を上げた。ゆっくりと、脇腹をなぞる。
「なんで…」
「…俺は、お前を友達だなんて思ったことはない」
無表情でアキラを見つめ、脇腹を撫でまわす。アキラは野々宮の言葉に目を見開いた。
「俺はね、唐津。お前をあいつから引き離すためにお前に近づいたの。」
「あいつって…」
「薬師寺太陽」
野々宮は無表情のまま、淡々と言葉を発する。
「あいつが入学してきたとき、やばいと思った。この学校はとても特殊な学校で、顔や人気で生徒会の役職が決まったりする。俺はあいつが入るまでその地位を脅かされることなんてなかったんだ。なのに…」
悔しそうに、野々宮が唇を噛みしめた。
「…生徒会長の特権、知ってる?」
生徒会長の特権…?授業免除とか、そんなやつだっけ…
「違うよ、唐津。生徒会長はね、選ばれたものはアメリカにあるとある超一流企業数社の株と己の望む研究や職なんかに関する融資を無条件で受けることができるんだ。この学校はエリートの子供が多いだろう?そんな将来大会社を引き継ぐような優秀な人材たちのトップに立つものだと言うだけで、そんな甘い特権がもらえるんだよ」
初めて聞く話に、目を見開く。
「これは全校生徒には知らされていない。そういう裏特権があるということを調べたものにしかその特権は与えられない。情報をいかに手に入れるか、も特権を手に入れる条件の一つだからね。…ただ、この特権にはもう一つ条件があって。
それは、三年間一度も外れることなく生徒会長でいること。」
野々宮は確か一年の時からずっと生徒会長を務めている。ということは…
「そう。俺はその特権を手に入れるために会長になったんだ。なのに、薬師寺が入ってきて。俺の立場が怪しくなった。絶対に阻止しないと。其の為にはどうすればいいか。…答えは簡単。あいつの一番大事なものを奪えばいい。あいつから大事な物を奪い取って、立ち直れないまでにあいつ自身を壊してしまえばいい。
唐津、お前は俺の将来のための道具に過ぎないんだよ」
アキラはただ、体を撫で回されながらじっと話を聞いていた。
「…崎田と組んでお前を陥れようとしたのも俺だよ。お前を慰めて、落とすつもりだった」
野々宮の顔がすっと近づく。
あと数ミリで口が触れ合う、そのすんででぴたりと動きが止まった。
「…抵抗、しないの?ま、されてもするけど。ぐっちゃぐちゃに犯して、写真と動画を撮って、あいつに送りつけてやるよ。流されたくなかったら立候補を辞退しろってね」
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[mokuji]
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