×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




それぞれの本気

とうとう生徒会役員の選挙候補者の告知が始まった。中でも一番の注目株はやはり会長選。推薦候補の野々宮真尋と、立候補の薬師寺太陽の一騎打ちだ。

二人の写真が大きく載せられたポスターなんかも作られて、あいつぐポスター盗難に広報部も辟易しているようだ。

崎田に宣戦布告をされてから一週間。アキラは、不思議に思っていた。告知もなされたことで、恐らく今以上に嫌がらせがひどくなるだろうと覚悟していたのだが、被害は激化するどころか減っているように感じたからだ。


『一年皆を味方につけてでも、あなたから彼を奪います。』


あの日、崎田は確かにそう言った。あの口ぶりからして、一年全体から集中砲火を浴びると思っていたのだが。

「アキラ、何考えてるの?」


後ろからアキラを抱きしめていた太陽が、肩に顔を乗せ覗き込む。太陽は時間が取れる限り、アキラの部屋へ訪れていた。

「いや、なんでもない。」

にこりと微笑むと、太陽はぎゅうぎゅうと抱き着き、肩に頭を埋める。

「太陽?」
「…大丈夫。大丈夫だよ、アキラ。心配しないで…」

やはり連日の選挙の準備などで疲れているのだろうか。声が眠そうに小さくなっていく。

「いいよ、太陽。少し寝ろ。ちゃんと起こしてやるから」

選挙が終わるまではいくら恋人とはいえ、泊まらせるわけにはいかない。眠そうな太陽を横に座らせ、膝に頭を乗せてやった。太陽はすぐにすう、と柔らかな寝息を立てる。

「守るから…アキラ…」

意識があるのかないのか、完全に眠りに落ちる前につぶやいた太陽の一言にじんと胸が熱くなった。


時同じくして、崎田は一人眉間にしわを寄せ考えていた。アキラに宣戦布告してから、一週間。次の日から崎田は即行動に出た。皆の前で健気で一途な男を演じ、狡猾にアキラを貶める言動を繰り返し一年の皆から同情とアキラに対する憎しみを引き出すことに成功した。
なのに、なぜ。
学校の一年生は、アキラに対し嫌がらせを激化させたにもかかわらず、その被害がアキラに行く前に鎮静化されていたのだ。全てではないが、特に悪質なものなどは必ずと言っていいほどもみ消されており、誰がそれをなしたのかもわからない。
崎田の計画では、ひどくなる嫌がらせにぼろぼろになり、疲れ果て太陽と別れるかもしくは学校からいなくなるかと思っていたのに。そうなったとき、太陽を慰めて心を癒し、自分が恋人になるつもりだったのに。

「一体、誰が…」

崎田はぎり、と爪を噛んだ。

その次の日。アキラは嫌がらせが激化しない理由を思いがけなく知ることとなる。

[ 159/283 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
トップへ戻る