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6

「唐津先輩ときちんとお話しするのは初めてですよね。」
「…そうだな」


しばらく、沈黙が続く。口火を切ったのは崎田だった。



「…僕、薬師寺君が好きです」



自分を強く睨みつけながら、崎田がはっきりとそう言った。…ああ、やっぱり。アキラは無言で崎田の視線を受け止める。

「入学してから、ずっとずっと好きだった。彼は僕の憧れで、理想で。クラスで一人ぼっちで寂しそうな彼の力になれたらって、ドキドキしながら声を掛けたんです。
彼は、とても嬉しそうに僕に返事を返してくれて。それから、ずっと一緒にいた。とても、とても嬉しかった。友達としてでも、彼の側にいられるだけでよかった…!」

その時の事を思いだしているのだろうか。崎田は頬をわずかに緩めながら話をする。

「…でも、ある日気づきました。唐津先輩に、笑顔で駆け寄る彼の顔を見て。彼の好きな人は、あなたなんだって。…彼に確認を取った時、だらしなく好きだと笑う彼を見て、悔しかった。ずっと見てきたのに。こんなにも、思っているのに。だから、同じ名前だということを理由にして名前で呼んでもらうようにして。慣れるためだなんて言って、…っ、側にっ…、」

崎田はくしゃりと顔を歪め、ぽろぽろと涙をこぼす。

「あなたとお付き合いするって聞いても、諦められなかった!認められなかった!だって、あなたからは彼を好きだって気持ちなんて少しも見えなかったんだもの!」

崎田は涙に濡れた目で、アキラを強く睨んだ。アキラは、ただ無言で崎田の言葉を聞いている。

「なのに、あなたは彼の心を捕えて離さない!悔しくて!だから一年生の皆の前で、あなたが嫌がらせを受けるようにしたんです!それで、別れちゃえばいいのにって!」


崎田はそこまで言うと、ごしごしと涙を拭いてまたアキラを強く睨む。


「ぼくはこれからも、あなたに対する態度は変えません。あなたを認めてないから。卑怯だと言われても、一年の皆を味方につけてあなたから彼を奪います。
彼が本気で好きでないなら、別れてください。あなたは、彼に何ができますか?彼が生徒会長になるために、支えになってあげられますか?僕なら、彼の支えになれる。彼を助けてあげたい、と思う。
…お話はそれだけです。」


アキラは終始無言だった。崎田に言葉を返すことなく、教室の扉を開ける。
ぴしゃり、と扉を閉めた後。アキラは目を閉じ天を仰いだ。



「…本気、か…」



ぽつりとつぶやき、崎田を残し日の落ちる廊下を歩いた。



end

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