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5

会長選はまだ先なため、誰にも言わないでほしいと言われた。野々宮はもう知ってるんだろうか。太陽から立候補すると聞かされてから一週間。野々宮からメールが来たり、話はしたりするもののその話が出ることはない。アキラは複雑な気分だった。どちらも、頑張ってほしい。

アキラに対する嫌がらせも止んだわけではない。野々宮のおかげで同学年や上の学年からの嫌がらせは少ないものの、一年からの非難や嫌がらせは前回の廊下での出来事によりむしろ増していた。


だが、アキラはその一切を太陽には言っていない。自分の事で太陽の意気込みを台無しにしたくはないからだ。
人前に出るのを嫌がる太陽が一大決心をして会長選に挑むというのだ。

俺は、大丈夫。

アキラは日々ひどくなる嫌がらせにも、自分を乱すことはなかった。

ある日の放課後、アキラはとある空き教室の前で聞きなれた話し声を耳にしてふとその前で足を止める。

「唐津先輩と、うまくいってるの?」
「うん。」

崎田と、太陽だ。思わずアキラはその場で立ち止まってしまった。太陽は、俺と付き合うことになったその日の夜に崎田にうまくいったことを報告したらしい。俺は崎田が太陽の事を好きなはずだと言ったけど、太陽は告白されたわけではないからそのことを自分から確認することはできなかったそうだ。崎田は笑顔で
『よかったね』
と祝福してくれたそうだ。

「…よかった、ね。でも、最近一緒にいないんでしょ?」
「うん、でも、理由はちゃんとアキラに言ってあるから。…崎田は広報部だから知ってるよね。」

広報部は選挙や文化祭など、学園行事を取り仕切るため、いち早く情報を入手することができる。崎田はそれに所属しているということは、今回の立候補の事も知っているのだろう。

「薬師寺くん、僕…!」

崎田が何か言いかけた時、スピーカーから放送が入った。太陽への、職員室からの呼び出しだった。

「ごめん、行ってくるね。あ、話ってなんだったの?」
「…ううん、また今度でいい。行ってらっしゃい。」

太陽が教室を出ると、ちょうどアキラの真正面になった。

「あ、あれ?アキラ、どしたの?」
「いや、たまたま通りかかっただけだ。お前、呼ばれてたんじゃないのか。」
「あっ、うん、行ってくる。アキラ、暗くなる前に寮に帰ってね。危ないから。」

そう言って太陽はばたばたと職員室へ向かった。アキラは開けられた扉から、こちらをじっと見る崎田に気付いた。

「…唐津先輩、中に入りません?ちょうどお話したいと思ってたんです。」

崎田に促され、中に入り扉を閉める。思えば、崎田ときちんと話をするのはこれが初めてだ。崎田と、正面から向かい合う。

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