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その日遅く、太陽がアキラの部屋を訪ねてきた。へにゃりと優しい笑顔に、アキラはほっとする。崎田と付き合ってると思っていた時期は、もっと長かったのにそんなに離れているとは感じなかったのに。一週間ぶりに見るその笑顔に、なんだかこの一週間が長く感じた。
リビングに着くなり、太陽がそっとアキラを抱きしめる。
「ごめんね、アキラ。一週間もほったらかしにして…」
「ほったらかしってなんだよ。俺はお前のペットか?」
「ち、ちがうよ!」
わざと意地悪っぽくいうと、太陽が慌てて否定する。そんな太陽にアキラはくすくすと笑った。
「うそだよ、うそ。んな焦らなくても。」
「…焦るよ。アキラ、怒ってもう別れるとか言ったらどうしようかって、俺…」
眉を下げ、しゅんとする太陽の頭をよしよしと撫でてやった。太陽が、後頭部をそっと押さえ顔をゆっくりと近づける。と、直前でぴたりと止まった。
「き、キス…してもい…?」
へにゃりと眉を下げ、おずおずと聞く。
…だから、なんでこいつはこんな時にヘタレるかな…
「ダメって言ったら?」
「や、やだ!…し、したい、です。」
「ん…」
一週間ぶりのキスは、なんだか甘く感じた。
「え…?立候補?」
太陽はこくりと頷く。
「前から言われてたんだ。後期に出てみないかって。自信がないからずっと断ってたんだけど、俺、決めた。生徒会長選、出るよ。」
まっすぐに、アキラを見てそう告げる。太陽が、生徒会長に立候補する。野々宮と勝負をするというのだ。この一週間、その準備に時間を取られ忙しくしていたのだと告白される。
恐らく激しい選挙戦になるだろう。顔で選ばれたとはいえ、野々宮だって相当の実力者だ。
「なんでまた急に立候補しようと思ったんだ?」
「…それは、まだないしょ。…だめ?納得してくんない?」
伺うようにアキラを見る太陽に、にこりと笑い頭をくしゃくしゃと撫でてやった。
「いや、いいよ。お前なりの考えあっての行動だろ。頑張れ。」
「…俺、勝つよ。絶対、勝ってみせる。しばらく、一緒にいれなくなっちゃうかもしれないけど…
…俺を、捨てないでね?」
まるで捨てられた子犬のような顔でアキラにすがり、抱きしめてくる。アキラはそんな太陽に、胸がぎゅっとなった。
「…ばぁか」
抱きしめる太陽を、自分もそっと抱きしめ返した。
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