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3

悪意ある張り紙がなされてから一週間。アキラは嫌がらせを受けていた。とはいえ、クラスの皆はアキラを守ってくれているので、教室にいる間は被害はない。主に移動教室や、廊下、靴箱。陰口やゴミを投げられるのは当たり前。靴箱にはひどいときには使用済みのコンドームなどが入れられていた。

太陽は、最近何やら忙しくしており、あまりアキラと一緒にいることが少ない。代わりにと言ってはなんだが、野々宮がアキラを心配してよく側にいるようになった。クラスの皆は、『お前が近くにいると余計に唐津が恨まれるじゃないか』と抗議したのだが、野々宮はそんなクラスメイトと、アキラに頭を下げ、
『近くにいれば、唐津自身への被害を受けることはない。何かあった時に側にいて守りたいから。』
と言った。それを聞いたクラスメイトは、野々宮は何ていい奴で責任感があるんだと感動していた。代わりに、クラスでは太陽の事を非難する声が大きくなった。
『唐津が嫌がらせを受けているという時に、あいつはなぜ側にいてやらないんだ』
と。アキラは、そんなクラスメイトに太陽も何か考えがあって動いている。嫌がらせを受けるのは自分の責任であって誰のせいでもない、と説明する。

嫌がらせが始まって一週間。アキラはまた移動教室のため。一年の教室の前を通った。廊下に、崎田が友人に囲まれて談笑している。崎田はアキラに気付くと、大げさに頭を下げた。その崎田の様子に、崎田の周りにいた生徒たちが一斉にアキラを見る。

「こ、こんにちは、唐津先輩!」

崎田は痛々しく、つらい、という笑顔でアキラに挨拶をしてきた。アキラはちょっとまゆを寄せたが、同じように微笑んで崎田に挨拶を返す。

「唐津先輩ってえ〜、意外とずぶといんですねえ〜」

そんな二人の様子を見た一年生が、ぽつりと嫌味をこぼした。

「そうだよねえ〜。崎田様がさあ、どんな思いで挨拶してるかわかってんのかなあ?」
「ていうかあ、何様って感じ?平凡のくせして、薬師寺様と野々宮様、二人も手玉に取るなんて〜。どっちか一人にすればいいのに。」
「カラスは欲張りだから、きらきらした物は全部自分の物にしときたいんじゃない?」

くすくすと笑いながら、明らかに聞こえるように陰口をぶつけてくる。

「や、やめて!」

崎田が、廊下にいる一年生たちに向かって叫んだ。

「か、唐津先輩は、悪くないよ!の、野々宮様だって、きっと知らずのうちに手玉に取られたような形になってるだけだよ!や、薬師寺様だって…、ぼ、僕がもっと魅力的なら、きっと、きっと…!」

そこまで言うと、ぽろりと涙を一粒こぼして走り去ってしまった。

何て健気な…
崎田様、おかわいそう…

周りから聞こえてくる同情の声に、アキラは表情を変えずにその場を通り過ぎた。

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