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「ちょっと、唐津!どういうこと!?」
「薬師寺様ならず野々宮様まで…!」
アキラは昼休み、野々宮の親衛隊に無理やり校舎裏へと連れ出された。
「あのさ、悪いんだけどあの写真は事故なんだよ。」
「うそばっかり!」
アキラが困惑した顔で言うも、頭に血が上っているのか全く話を聞いてくれない。
もういいかなあ。
「やめてくれないかな」
なんだか面倒になってその場から去ってやろうかと考えたとき、野々宮当人が現れた。
「の、野々宮様…」
「…あれは本当に事故なんだよ。上から落ちてきた物から庇ったらたまたまあの形になっただけなんだ。彼はただの友人だ。」
野々宮の説明に、渋々といった形で親衛隊たちは引き下がった。
「助かったよ野々宮、ありがとな」
「…すまない唐津。まさか誰かにスクープされてただなんて…」
本当に申し訳ない、と野々宮が頭を下げる。そんな野々宮に、アキラは笑って肩をたたいた。
「お前のせいなんかじゃないさ。それに、今お前、ちゃんと親衛隊に説明してくれたじゃん。」
にこりと笑うアキラを、野々宮が思い詰めたような顔で見つめた。
「…俺は、友人なんかじゃ…」
「え?」
野々宮は一度頭を振ると、にっと笑ってアキラの肩をたたいた。
「なんでもないよ。うん、俺とお前、ダチだもんな。」
「…?あ、ああ…」
さっきの、一瞬の顔はなんだったんだろうか。アキラは野々宮に問い詰めることもできず、そのまま去っていく野々宮の背中をじっと見ていた。
「どういうことだ」
「なにが?」
険しい顔で自分を責める男に、崎田は知れっとした顔で返事を返す。
「あんな写真まで載せるだなんてどういうつもりだ!」
ばん!と机をたたき、崎田を睨む。崎田はそれをちらりと一瞥した。
「なにが?好都合だと思ったんだけど。ああやって唐津を全校生徒から恨まれるように持って行って、それをあんたが助けてやればいいじゃない。弱っているところにつけ込むのは得意でしょ?それとも何?今さら、唐津にバレて軽蔑されたらとか思ってんの?野々宮会長」
野々宮は崎田の言葉に口を噛んだ。
「…そういうわけじゃない。」
苦々しい顔で下を向く野々宮に、崎田は近づきその頬に手を当てる。
「いいじゃない。あんたは手段を選ばず唐津を手に入れたかった。僕も薬師寺君を手に入れたかった。お互いの利害が一致したからこその共同戦線だったでしょ?…今さら、怖気づいたとか言わないでよね。僕はこれから唐津を全力で追い詰める。あんたはそれを慰めて、唐津を落とせばいい。大丈夫。バレたりしないよ。僕もあんたも、生徒からの人望が厚いからね?」
くすくす笑う崎田の手を払い、野々宮は教室を出て行った。
「…そうだよ。何が何でも、薬師寺君を手に入れるんだもの。…彼がほしいんだもの…」
一人残された崎田はぽつりとつぶやき、頬に一筋涙を伝わせた。
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