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3

「それで、崎田のことなんだけど」



突然出された名前に、ぴくりと反応する。そうだ、じんとしてる場合じゃない。肝心な話を聞いてない。
太陽が話し始めるのをじっと待つ。



「あいつ、クラスで一緒になって初めて普通に話しかけてきてくれた友達なんだ。俺、この学園に入学してから周りが王子様とか言ってちやほやしてきて、普通に接してくれる奴なんていなかった。そんな中で、唯一普通に接してきてくれたのが崎田。あいつのおかげで、他にも友達ができたんだ。
崎田はクラスで俺が一番信用できるやつだったんだ。ある日、あいつから『唐津先輩が好きなの?』って聞かれて。
うんって言ったら、協力してやるって。相談に乗ってくれるようになったんだ。
そんで、俺がずっと『あっくん』って呼んでるのを聞いて、こ、恋人になるなら、名前で呼べるようにならなきゃいけないって言われたんだ。」



真っ赤になっていじいじと指をいじる太陽。まさか、とは思う。思うんだけど、


「…崎田に、『同じ名前だからまず僕で練習しろ』とか言われたとか…?」
「なんでわかったの!?」

驚いて目を見開いた太陽に、めまいがした。こいつ、とんでもないバカだな!

「お前ね…」
「だから!崎田とは別に付き合ってる訳じゃないんだよ!あ、あっくんを名前で呼ぶために練習してただけなんだ!崎田に、『できるだけ一緒にいた方が慣れるのも早いよ』って言われたから、ほんとはあっくんと一緒にいたかったけど崎田と行動してたんだよ!」


必死になって言う太陽にため息をつく。


「き、昨日のことだって、崎田を心配したんじゃないよ!逆だよ!」
「逆?」
「うん!あっくんが崎田に何かしたのかじゃなくて、あっくんが崎田に何かされたんじゃないかって聞いたんだよ!」



太陽の言葉に、ぽかんと口を開けて放心してしまった。
確かに、取りようによってはそうだ。

太陽は、崎田と恋人じゃなかった。俺を疑った訳じゃなかった。心配してくれていた。
その事実に、心底ほっとしてる自分がいた。


無言で、自分の胸をぎゅっと掴む。なんで。なんで俺、ほっとしてんの。

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