すっかり涼しくなり食べ物が美味しい秋へとなる筈が、自重出来ていない太陽さんの本気のせいでまだまだ日中は暑い日が続く。

やはり秋と言えば食欲の秋へと思考が巡るのが私と言う人間であが、とりあえず冬に頑張って絞りますと言うことでそれなりに食べ物を美味しく沢山頂いている、今のところまだ太っては、いない。……と、言いたい。


「ホンマ自分美味しそうに食べんなぁ」

「ほふ?(そう?)」

「そんな食っとると肥えるで」

「五月蝿い!」

「でも俺はご飯美味しそうに食べる子の方がかわえぇと思うで?」


にっこり笑って頭をわしゃわしゃしてくる白石君、畜生やめてくれ惚れてまうってばマジではぁぁぁイケメン、白石君すき。

それに引き換えなんだあの一氏の肥える発言は。

はぁぁぁ別にイケメン白石君に可愛いって言われちゃったし、私それで一氏のことなんて許せるし?気にはしてませんけども?


「白石、お前きしょい」

「……はぁ、はいはい。ほなそれ食べ終わったら気ぃ付けて帰んねんで」

「はぁい」


そう言って白石君は部室の鍵を置いて帰ってしまった、あぁ私の癒しが……。

それにしても一氏の機嫌が頗る悪い、はて、どうしちゃったんだ一氏君、ただでさえツリ目で恐いのに尚更恐くなっちゃってますよおぉ恐っ。


「解ったぞ」

「なんやねんイキナリはぁ?きっしょ」

「え、何か酷くない?」


プイッてそっぽ向いちゃう一氏の『それ』はとっても解りやすい感情である。

一氏もどっかの誰かさんを見習ってポーカーフェースになってみてはどうた、心を、閉ざす……侑士きっしょ!今侑士の顔浮かんだけどきっしょ!勝手に私の想像の中に出てくんなし。


「……お前は、白石と仲えぇな」


私が侑士の面影と闘っている中、一氏がポツリと一言零す弱い言葉。

珍しい。

こっちを向いてしゅんとしているではないか、何だこれ一氏さん遂に私にもデレ期到来ってやつですかうふふ。


「そんなことないよ、白石君が優しいだけ」

「俺が優しないからか?」

「そんなんじゃないって」


何だか、うん、とってもしゅんとしちゃってる一氏君だから調子狂っちゃう。

やっぱり私はアホボケ死ねカスって言ってる様な一氏のがすきだな…あれ、私ってばマゾだったのかしら。

あらヤダ私変な新境地開いちゃったのかもって思ってたらこれまた珍しい事に一氏が私に抱き着いて来たでは有りませんか。あらあらまぁまぁ。


「どったの一氏」

「…なんもない」

「そっか」


んー…非常に困ったのである。そうだ、こんな時は美味しいものを食べましょうねってことで一氏に私の秘蔵のアイスクリームを与えてあげようではありませんか。


「ごめん一氏、ちょっとだけ離れてね」


部室の隅にひっそりと置かれた小さな冷蔵庫。私が勝手に置いたのであるむはは。

冷凍庫付きのそこには沢山のアイスクリーム、私お腹弱いクセにアイスクリーム大好きなんだよねってことで今回は大好きなチョコレート味のアイスを一氏君にプレゼンツッ。


「一氏はさ、チョコレート味のアイス好きだよね」

「おん」


これは生チョコ入りのスペシャルなアイスなんだよって説明している傍からなんだよ勝手に食べてるし何なんだよ全くもう可愛いぞこの野郎。


「ごめんね一氏」

「何が」

「白石君にヤキモチ妬いたんだよね」

「寝言は寝て言えや」

「ムグッ」


アホみたいに口を開けていたら無理矢理口にアイス突っ込まれて驚いた、しかし美味いなこれ、一氏にあげるとか惜しいことしたなこれ。


「美味いか?」

「…美味しいよ」

「そらよかったな」

「……一氏、」

「怒ってへんから」


気にせんとき、って、ふにゃって笑うから、その笑顔が私は好きなんだよこんちくしょー!って飛び付いたらゲフッて変な声を出して一氏は受け止めてくれた。


「白石とイチャイチャし過ぎやで」

「え、だって白石君好きだもん」

「浮気か!死なすど!」

「おえっごごごごめんなさい」


嘘だってば冗談だってばそんなにぎゅうってされたら食べた物でるってばおぇぇ……でも、やっぱり嬉しいのは普段あんまりこんな感情を出してくれないからでさ、私は嬉しいんだよ。


「白石に近寄んな」

「やっぱヤキモチだ」

「ちゃうわアホ!」

「アホっつった方がアホなんだよ…でも、うん、これからは気を付けるね」

「当たり前や」


それから一氏はパクパク一人でアイスを食べていた、ぱくぱくぱくぱく、私にもくれよ馬鹿。


「何や欲しいんか」

「当たり前じゃまいか」

「寒っおもんないシャレ言う奴にやるもんなんか無いわ」

「ひっど!」


そんなことを言わずにおくれよ一氏くぅん何て言ってる傍からごっそさんって全部食べやがったよバカ氏の奴。ふざけんなもう一口くらい寄越せよこんにゃろうキリキリキリ。

まぁいいよ、帰りまた買うしってことで帰る支度をしていればツンツンって何だね一氏君。


「何?食べたんなら帰……」

「帰りどっか寄ろか」

「う、ん…有難うユウジ」

「どう致しまして」


それは反則行為である。

とりあえず明日白石君にごめんねって謝っておこう、白石君も空気読んで帰ってくれたんだし、うん、謝ろう。



ベ ル ジ ャ ン

チ ョ コ レ ー ト

チ ャ ン ク



しかし不意打ちのキス程、チョコレートより甘いものはない。



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31/loveさまに提出

おしお



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