そりゃあさ、僕の方が年上だよ?彼に比べるとだいぶん大人だ。余裕ってやつを見せるべきだ。でもさあ、

「またチョコレートか…もう足りている」

この言い方はあんまりだ!そりゃ僕だって拗ねたくもなるよ一生懸命心込めて作ったってのに!なんだよその呆れ顔腹立つな!

「……ああそう、そんなこと言うんだ、ふううううーん?」
「なにか文句でもあるのか?」
「べっつにー?そうだよね、三成くんはもう僕なんかから貰わなくたって他の数え切れない女の子達から貰ってるもんねそれで事足りてるもんねーこれはこれは失礼しました」

皮肉という皮肉を込めてそう言ってやったのに、三成くんはというとそんな僕の言葉などどこ吹く風って感じ。その態度がまたムカつく。

ダメだなー、もっと余裕綽々なとこ見せなきゃいけないのに意地張ってどうするんだ僕。子どもか。でもただチョコ要らないって態度に腹立ってるんじゃなくて、その原因に嫉妬してるだけなんだよなあ。どっちにしろ大人気ないのには変わりないか。ダサいな。

「……もういい、今日は帰るよ」
「!」
「ちょっと頭冷やしてくっ、」

背を向けたその時、腰辺りに軽い衝撃。次いでじんわり感じる暖かい体温に、抱きつかれたのだと理解した。

「…なんだよ、チョコいらないんでしょ?」
「………」
「チョコ渡しにきたんだし、いらないんだったら」
「気付け、馬鹿…!」
「は?」

何に?と三成くんの方を見たが、顔が見えない。しかし髪の隙間からちらりと見えた耳はすこぶる赤い。これはいったい。

「…どういうこと?」
「だから…チョコはもういらない。チョコより、もっとほしいものがある」
「………どこの口説き文句だよ」
「うるさい」
「…なんだよ…無駄に嫉妬してた僕めちゃくちゃカッコ悪いじゃん」
「カッコ悪くなどない」

回されていた腕が腰から首に上がってきた。吐息が耳元を掠めてくすぐったい。

「どうせならもっと嫉妬すればいい。そうして俺しか見えなくなってしまえ」
「それはそれで怖いと思うなあ」
「…嫉妬してほしかったと言えばまた子どもだと笑うか?」
「んー、笑うね。現にいまも笑ってるし」
「………」
「でも、そんなところも可愛くて大好きだよ、三成」

すぐそばにあった顔に口付けると、不機嫌そうに顔を歪められた。あれ、おかしいな。もっと照れるかと思ったのに。

「…俺は…愛している」
「!」

言うようになったねえと頭を撫でたらもっと不機嫌な顔をされた。解せぬ。