「はい、どうぞ」
「…物好きめ」
「そうじゃないでしょ?何て言うの?」
「感謝の言葉欲しさに、私にこのようなものを?」
「違うけどさあ…」

せっかくチョコレートを渡されるというのに、いつもと変わらないつんとした無表情。つめたっ。

半兵衛くんにも散々言われたっけなあ、物好きだって。でもさあ仕方ないでしょ?物好きでもなんでも、好きになっちゃったんだからさあ。

「…ま、受け取るだけ受け取ってよ。なんなら半兵衛くんにあげても構わないし」
「せっかく贈られたものをそのように無下に扱うのは気が引ける。貰えるものは貰っておこう」

…そう言いながら毎年ちゃーんと律儀に食べてくれるんでしょ。そういうところも大好き、なんだけど、

「官兵衛くん」
「なんだ」
「そういう社交辞令みたいな感じで受け取るなら、やっぱりいいや」
「は?」
「僕今回本気だからさ。優しくしないで、はっきりしてほしい」

ただの僕のわがままでしかないけど。断られたならそれまでだ、今までみたいに友達のままで接する。受け入れてくれたなら大感激だけどそれは厳しいだろう。でも優しい官兵衛くんはずっと曖昧にして、僕を傷つけまいとしていた。結果的にはそれで傷付いてたんだけどね、手応えなしなんだーって。

「遠慮せず素直に言って?迷惑ならもう渡さないし、今後も変わらず友達として接するよ。フラれちゃったっつって半兵衛くんとの笑い話にするからさ」
「…そうか、卿には私はそのように酷な人物として映っていたのか」
「ちがっ、そうじゃないけど!むしろ優しすぎるなあって思ってるけど!」
「優しい?私が?」
「優しいじゃん。そりゃリアクションは薄いけど、毎年毎年僕のこと気遣って受け取ってくれてたし」
「……それこそ大きな勘違いだ」
「え?」
「私は優しい人間などではない。ずっと卿の気持ちが私にあるからと安心して、答えも出さぬまま、弄ぶような真似をしてきた。酷い人間だろう」

自嘲気味に笑いながら、ずい、と顔を寄せられた。安心してって、それじゃあ官兵衛くんは、

「…なにその言い方。期待するよ?」
「好きにすればいい」
「ふはっ、そうきたか…じゃあ言うことあるでしょ?ほら」

これ見よがしにチョコを差し出すと、その手を取られてそのまま抱き寄せられた。

「ししょう」
「っ、はい?」
「…私は卿がほしい。別にチョコレートなど、貰えなくても構わぬ……これで満足か?」
「…大満足だよばかやろー」

不服そうに眉間にシワを寄せてるくせに、真っ赤な顔した官兵衛くんに抱きついてやった。