「来月二人で会うんだとヨ」


部屋のドアを乱暴に閉め、ベッドに飛び込んだ。ふざけんな。ふざけんなふざけんなふざけんな。意味わかんねー。イライラする。なんだよあいつ。楽しそうに笑ってんじゃねーよ。嬉しそうにスケジュール書いてんじゃねーよ。彼女かよ。バカじゃねーの。

(最近こんなんばっかだ、クソが)

今日だけじゃない。もともと気に入らなかったんだあのホモヤロー。大会で会うといつもなまえに色目使いやがる。テメエは東堂と競いあってりゃそれで十分だろ。なまえもなまえだ、あの鈍感ヤローが。自分が狙われてるってわかってんのかよ。それをホイホイ自分からついていこうとしやがって。だからお前は…

「……あああああっ、クソッ!!」

一番意味わかんねーのは、こんなにイラついてる俺だ。





「………一体なにがあったんだ?」
「なんにもねーヨ」

休み時間。いつもなら俺に話しかけているはずのなまえは後ろの席にはおらず教室にすらいない。あーイラつく。あからさまに朝から避けてやがる。その代わりとばかりになまえの席に座っている東堂にさえ腹が立つ。

「なんにもないという顔をしていないぞ、まったく…本当はなまえの奴に会いに来たのだが仕方ない、ついでだ。この俺がお前の悩みを聞いてやろう」

どうださすがの荒北といえども俺が相談に乗ってやるのだ嬉しいだろうぐだぐだと言ってる東堂をスルーしてケータイを開く。メールも着信もなし。なに期待してんだよ。勝手に怒って勝手に話終わらしたのは俺だ。あいつが一番意味わかんねーだろうに、寝たら元通りになるとでも思ってたのか。

だいたい、あいつ巻島だけ特別扱いしすぎだろ。ダンシングに見惚れたとか、わざわざスケジュール帳に遊ぶ日書くとか、俺一回もされた覚えねーよ。多分。

(…いやいや、まさか。ナイナイ)

まさかあいつも同じ気持ちなんて、そんな馬鹿な。彼女いない歴=年齢のあいつが?恋したことだって聞いたことねーよ…いや、俺には言わなかっただけで彼女いたかもしれねーし片想いだってしてたかもしれねー。でも恐らくそんなはずはない。だってずっと俺がそばにいたから。周りは俺のこと怖がってたから、だからそばにいるなまえにも近付かなくて、だから、

だからあいつには俺しかいないはずだ。心の底から信頼してる奴は。

「おい…おい!荒北!無視しすぎだせめてこっちを向け!おい!ブス!」
「あいつ、」
「この…はっ?なに?」
「巻島だよ巻島ァ。あいつ、なんであんなになまえと仲良いワケェ?」
「…さすがの俺にも話が見えんが」
「来月二人で会うんだとヨ」
「……それが、いまお前が不機嫌でここになまえがいない理由と関係しているのか?」
「………」

肯定も否定もせずに黙っていると、そうか、とだけ返した東堂。俺にもよくわかんねーんだよ。でも無性に腹立つんだよ。

「…よし、話はわかった」
「あ?」
「荒北、俺としても非常に不本意だが、今日の昼食は二人で食べよう」
「二人…って、はあ!?ざけんななんで俺が!!」
「言っただろう?この山神東堂が直々にお前の相談に乗ってやると!」

ではまた昼休みになー!

颯爽と去っていった東堂。同時に鳴ったチャイムと、入れ違いで帰ってきたなまえ。後ろを向いていた俺と必然的に目が合い、慌てて俯きやがった。なんだよそれ。あーもう、マジでイラつく。








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