「そういう問題じゃねーよボケナス!」


「とうっ!」
「つめたァッ!!」

練習でクタクタになった体に鞭を打ち、やっとロッカーにたどり着いたかと思えばなんだこれは。顔面にガツンと押し付けられた冷たいなにか。イラッとして睨み付けるとそこにいたのはベプシを握りしめニコニコしているなまえだった。

「っにすんだコラァ!!つめてーだろバァカ!!」
「何言ってるんだ、冷たい方が美味しいだろ」
「そういう問題じゃねーよボケナス!」
「ボケナス言うな失礼な!」
「つか、なんでベプシなんか持ってんだヨ」
「えっ、だ、だって今日やすが…」

途端にシュンとしだしたなまえ。なんだよそれ、俺がいつベプシなんか…あァ、そういや今日授業で当てられたあとそんな話してたっけ。ったく、無駄に律儀なとこあんだよなこいつ。

頭をガシガシ掻きながら冷たいそれを受けとる。するとパァッと明るい顔になった単純野郎を鼻で笑ってやった。

「あっ!あと、それ、忘れてたわけじゃないからな!本当は練習前に買おうと思ってたがやっぱり練習あとの方が美味しいだろうなと思ってさっき買ったんだ!忘れてたわけじゃないからな!」
「気にしてねーヨ別に。まあありがとな」
「おう!やすも気にするな、失敗は誰にでもあるんだからな!」
「っせ」

受け取ったベプシを一口飲む。美味い。チラリと隣を見ると、満足したのか笑顔で帰り支度をしているなまえが映った。

ちっせー頃、それこそ物心ついた時ぐれーから一緒にいた。俺の隣にはなまえがいて、なまえの隣には俺がいる。それが当たり前。それが日常。この関係性が崩れたことはないし、今後崩れることもない。断言してやる。こいつには絶対言ってやらねーけどな。これからも俺たちは、

(幼馴染み、だから)

そうだ、幼馴染みだから一緒にいると落ち着くし、楽だ。それが心地良いから一緒にいる。それだけだ。

「美味いか?やす」
「…おー、つめてーし最高だヨ」
「よかった!」

それだけのはずなのに、心地良いはずなのに、たまに、無性に煩わしくなるんだ。









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