03
『おい、鬼小僧』
びりびり。まるですぐ後ろにいるかのような至近距離で聞こえてきた声にびくりとした。その独特の呼び名と能力を使うのは一人しかいない。
「…どうも、ゼブラさん。近くにいるんですか?」
『どうだかなァ。まあ、声が届く程度には近ェんだろ』
「(うわー超アバウト)…ハント中ですか?」
『いや』
「そうなんですか。にしても、なんでまた急に声飛ばしてきたんです?びっくりしましたよ」
『いつどこで声飛ばそうと俺の自由だろうが』
「まあそうですけど…あの、続きまたあとにしてもらっていいですか?今人気の多いとこにいるから周りからの視線が痛い」
『はあ?そりゃ俺のせいじゃなくてテメェが鬼だからだろうが。チョーシ乗んなよ鬼小僧』
「いやだからね、あんたは遠くから話しかけてるからいいけど俺周りから見たら一人でぶつぶつ言ってる変なやつにしか見えないから」
『知るか』
「………」
こ の く そ 自 己 中 が
ダメだな、これはもう無視するパターンで行くしかないな。さっさと家に帰ってさっさと昼寝しよう。
『おい…おいコラ鬼小僧』
(ん?ちょっと待てよ、今日そういえば月曜日だっけ)
『聞いてんのかテメェ』
(やっべ急いで帰んなきゃ。昼ドラ始まるじゃん)
『俺を無視するたァいい度胸してんなァ…ああ…?』
(不倫相手がそろそろ本命にちょっかい出しそうなんだよなあ。くそっ、あんなに面白いなら最初から見とけばよかった)
『チョーシ乗ってんじゃねえぞテメェ!!』
「うるせええええええええええええええええええええええええええしつけえんだよ鼓膜破れるわそんな遠回しなことしてねえで直接会いに来いよこの自己中野郎がああああああああああ!!!」
しまった俺としたことが我慢の沸点低すぎた。ああもう完全に浮いちゃったよ俺ぜんぶぜんぶゼブラさんのせいだほんとふざけてるあの人。仕方ない、ここはでんでん使って、
「おい」
「!」
「ご希望通り直接会いに来ってやったぞ」
「………ええ、っと、」
「それで?今度は俺の希望、叶えてくれんだろうなァ…?」
「………」
今度は本当にすぐ後ろから聞こえる悪魔の声に、口元がひくついた。
「…でんでん!」
「あ、おいコラァ!ふざけんなよ鬼小僧ォ!!」
バシュウと消えてしまった俺に叫ぶゼブラさんは、きっと先程の俺のように浮いてしまっているだろう。ざまあみろ。まああの人にはなんのダメージもないだろうけど。
青鬼と自己中野郎 140203