聖なる夜。このクソ忙しい日にバイトを入れられた黒田を家でゆったり待っている俺の前に現れたのは… 「お待たせしましたなまえさん!」 「…………はあ?お前こんだけ人待たせといてコスプレたあどういう了見だこの野郎しばくぞコラァ」 「コスプレじゃなくて本物ッスよ。俺、本物のサンタクロース」 「…寒さと忙しさで疲れたんだな…待ってろ今スープ温め直してやるから」 「待って待ってなまえさんマジなんだってば!俺!マジで!サンタなんだよ!ほら!」 「は?……っ、え、トナカイ…?」 「俺のクォータ、実はトナカイだったんスよ」 「ドヤ顔にイラッとしたしそもそも土足でトナカイ家に上げた時点でキレかけてるんだけど」 「そんななまえさんに、愛する俺からのクリスマスプレゼントです」 「何だよ愛するって…あ?なにこれ…なんかでけえ…」 「絵画です。開けてください!」 「絵画だァ?………待ってやばい嫌な予感しかしねえんだけど開けたくねえんだけど」 「開けないならプレゼントは朝まで俺に抱かれるコースですけど」 「開けるわ」 「じゃあ俺が朝まで抱かれるコースにします?」 「開けるわっつってんだろ無視すんなコラ……うーーーーーーわ…何この幼稚園児の落書き…」 「失礼な!俺が一生懸命描いたなまえさんの絵ですよ!」 「そうだな失礼だったわそこらの幼稚園児に描かせた方がもっと上手に俺の顔描いてくれてたな」 「俺以外にあんたの絵を描かせないでくださいそんなことさせたら嫉妬で頭おかしくなりそう」 「ヤンデレ定期乙。とりあえず明日燃えるゴミの日だったから簡単に折り畳んどかねえとな…」 「なんてこと言うんですか!そんなこと絶対させねえ寝室に飾ってやる!」 「あっ、やめろバカ返せ!そんなもん飾られたら、おま、」 「毎晩悪夢にうなされる!!」 「あ、起きた」 「ああっ!?」 …どうやらテーブルに突っ伏して寝ていたらしい。おはようございますと笑う黒田はサンタコスなどしていないしトナカイだって姿は見えない。そうか、夢か。そらそうだわな。よかった。 「…悪い、寝てた…おかえり」 「ただいまなまえさん」 「こんな時間までご苦労さん。待ってろ、飯…あ、先風呂にするか?」 「なまえさんはもう入ったんですか?」 「おう。あとは飯食うだけ」 「なら先食べましょう。お腹空いたでしょ?」 そう言ってテキパキと飯の支度を始めた黒田。買ってきてたローストチキンをレンジに入れて次はスープを温めている。気付けばもうすでにサラダはテーブルに置かれていた。手際がよろしいさすがエリート。完全に出遅れた俺は食器と飲み物を出すだけである。 「疲れてんのに悪いな」 「いいんスよ、好きでやってることだし…あ、そうだ」 「あ?」 「ね、なまえさん、今日クリスマスですよね?」 「そうだな」 「明日、休み取ってくれてましたよね?」 「そうだな」 「俺も明日休みなんです」 「知ってるよ。だから休みにしてもらった」 「っ、なまえさああああああん!」 「やめろ引っ付くなお茶こぼれる」 最近年末に向けて忙しくなってきてたから構ってやれてなかったしなあと言いつつ、本当は俺もそろそろ我慢できなかったから、なんて。 「朝まで俺に抱かれるコースですね」 「!」 そういやそっきの夢でも同じようなこと言ってたな。夢でも現実でも言うこと変わらねえってどういうこった。 「…まあトンデモ似顔絵押し付けられるよりはマシか」 「なんですか?逆がいいですか?俺が朝まで抱かれるコースにします?」 「……もうめんどくせえから半々でよくね?」 「!!!」 今日くらいはこいつのアホみたいなわがままに付き合ってやるのも悪くねえかとまぬけな顔を曝す黒田にキスを一つ。 |