天正忍者合戦


(DLC本編と同じく三成のキャラがぶっ壊れてる)







秀吉が天下を統一して数年。ようやく穏やかになったと思われたこの日本で、とある奇妙な事件が起きた。天下人秀吉を始めとした複数人の名だたる武将や姫武者が人格をおかしくされ、そのまま一つの場所に集結させられたのである。どうやら幻術の類いで操られているらしく、犯人を見つけぬ限りどうすることもできない。

「…ということで!集められたのが幻術が効かないほどに精神を鍛えし我らが忍び組と、」
「同じく幻術なんざくらわねえ最強無敵武者からす殿こと俺ってわけね…せっかくもう寝ようと思ってたのに…」
「まあまあ旦那、ここはか弱いあたしを守るためだと思って何卒何卒〜」
「か弱くはねえだろ…いや全然守るけどさァ…」

頭をかきながら眠い眠いとごちるなまえ。実家の屋敷でぐっすり眠りこけていたこの男をたたき起こしてここに連れてきたのは紛れもなく自分だ。そのせいか先程から事ある毎にこちらを見ては舌打ちをしてくるので、わざと挑発するように笑えば軽く脛を蹴られた。相変わらず分かりやすい男である。

操られている者は皆そうでなくとも一癖も二癖もあるほどなのに、そこからさらに人格を無理矢理操作されているためにとても厄介だ。からすの力を持つなまえがいれば多少は楽になるかと思ったのが半分。もう半分は、ただ単にこの面白そうな状況を教えてやらぬのは気が引けたからである。まあ本人は睡眠を優先しようとしていたが。

「ごめんねなまえ。全部終わったら好きな料理なんでも作ってあげるから、頑張るんだよ!」
「うっ、それはズルいですよおねね様そんなの頑張るしか…!甘味たらふく食べたいですよろしゃす」
「主や忠勝までもがやられた。助太刀を頼む」
「ファーーーーあの半蔵からお願いされたビビる。つか家康とか忠勝レベルの奴まで操られてるとか何事?泰平の世とはなんだったのか」
「うちの人や三成も被害者なんだよ〜!急いで助けないと!」
「幸村様と信之様もふらふらっと行っちゃって…たしか、甲斐ちんと北条さん家のお嬢さんもおかしかったっスよね?風魔の旦那」
「え、そうなの?」
「ククク…それはそれは面白いことになっておったぞ」
「なんで楽しそうなんだよ…」

とにもかくにも、まずは各地へ散らばり操られている者達を戦闘不能にしていくことになった。













「こ〜〜〜んばんは〜〜〜…」

びゅんびゅん飛び回る忍びーズに苦笑いしつつ置いてかれないように兵やら将やらを伸していく俺ことからす殿。まったくいい感じにグースカピーしてたら小太郎に無理矢理起こされて激おこだったんだけども話聞いてみたらなんか何気に大変なことになってたらしい。小太郎だけならまだしもおねね様や半蔵までいるとなると相当だろ。よかったわチートパワーなかったら絶対俺も操られてたじゃんコワァ。さっき甲斐姫とか見たけどおかしくなりすぎててくそわろた可愛かったけどな。さすがの小太郎も苦笑いしてたぞ。

さてさて、続いてやって来たのは三日月城である。ここにも無双武将いるかな〜なんて軽い感じで敵兵倒しまくりながら中を探索すると、死ぬほど見覚えのある真っ赤な乱髪がたなびいたのが見えた。うわ。

「み、三成…」
「!」

お面の下でげっそりしながらポツリと名前を溢す。瞬間、バッッ!!とこちらに振り向いたのはやはり石田三成その人である…紛れもなく…三成様でした……さあいつもは元気ハツラツな肉食系女子の甲斐姫がびくびくきゃわわな女の子になるような幻術だ、我らが三成様は一体どう変化したのやら。とりあえずぶっ飛ばす前に変化後のカオス三成を見たい。許せ三成、好奇心には勝てぬのだよ。

「ああ…やっと来てくれたんですね、なまえ兄さん」
「エッ」

返ってきたのは思わず目を背けたくなるほどの眩い笑顔である…え、誰?偽物?つか今兄さんっつった?え?

「ふふ、こんな月が綺麗な夜になまえ兄さんと会えるだなんて、嬉しいな…最近は政務が忙しくてなかなかお会いできなかったから、とても、寂しかったんですよ?」
「ま……って?ごめん待ってキャラ変わりすぎてわろえないむしろ吐きそう」
「それはいけない!兄さんこちらへ、俺の着物くらいいくらでも汚していいから」
「嘘だよ冗談だよ馬鹿!でも油断したらマジで吐きそうだからお前も嘘だと言って!怖い!怖いよ三成!」
「怖い…?ああ、鉄扇のことですね。俺があなたに手を上げるわけがないじゃないですか、安心してください」
「ほぼ日常茶飯事でしたけど!?」

やばい、これは、やばいぞ、吉継が見たら腹抱えて笑うレベルでやばい。しかし俺には笑い飛ばせるほどの余裕がない。マジで誰おまモードなんだけど。なんなの普段は超絶ツンツンで無愛想で可愛くねえからって真逆にも程があるだろ鳥肌がすごい自分でもビビるくらい鳥肌立ってるわヒエエエ。

ちょっとくらいの人格操作なのであればおねね様辺りにも見せて笑いの種にすらしてただろうがこれはいかん。三成本人の名誉のためにもさっさとぶっ飛ばして、早く正気に戻さねえと。お前のためだ我慢しろよ三成、と双剣を構えた俺に対し、なんと、三成が、鉄扇を放り投げた。

「……は!?いやいやいや何してんのお前はよ拾えや!そのまんま斬るぞ!?」
「それが兄さんの望みなのであれば、俺はそれを受け止めるよ」
「はあ!?」
「だけど、俺はなまえ兄さんとは戦えない…俺には、あなたを傷付けることなんて、出来ない…っ」

くっ、と悲しそうに顔を歪ませる三成に思わず俺も武器を下ろしてしまった。なんやこいつ…普段はなにもしてなくてもぶん殴ってくるくせに…操られているとはいえなんやこいつ…けど、無抵抗なのにぶっ飛ばすのも気が引けるぞ。戦う意思が無いのであればこれ以上ふらつかねえように正気になるまでどっかにくくりつけとけばいいのでは?

「な、なあ三成、本当に戦う気がねえならさ、そこの柱に…」
「そういう兄さんだって、本当は俺と戦いたくないんでしょう?なら、もうこんな野蛮な話は終わらせて、朝までゆっくり語り合いましょうよ」
「何をだよ…いや、まあぶっちゃけ戦いたくねえのは事実なんだけど俺早くこの怪事件終わらせて帰って寝たいだけなんだよな…」
「眠いのですか?それなら共に寝室に行きましょう。なまえ兄さんが眠るまで、俺が添い寝しながら見守っててあげる」
「無駄に甘ったるい声出すのやめて?残念ながらそれ俺得でもなんでもないよ?」
「それより兄さん、いつまでその面をつけているつもりなんですか?素顔のあなたとお話がしたいんだけどな…」
「ええええええ…じゃあお面外すからお前そこの柱に縛られててくれる?」
「それがあなたの望みなら」
「こわあこいつ」

やったらめったら甘甘しい乙女向けの声や口調で語りかけてくる三成のご要望はお面を外すことらしい。まあ俺の要望通り身動き取れないようにくくりつけていいとのことなので飲んでやるか。無駄にぶん殴らずに済むならそれがいい。

ほらよ、とお面を外してみせる。途端にパアアア…と今までの三倍はキラッキラの笑顔を見せた三成。笑顔と言うか、あれ、なんか顔が赤いような…え…?

ポカンとする俺をよそに、三成はふわりと俺の頬を両手で包んだ。

「はあ…なまえ兄さん…今日も今日とて、なんと凛々しい…」
「エッッやめて三成お前に顔面褒められるとか嫌味にしか聞こえない」
「どういう意味ですか?それより兄さん、もっとその男らしい声で、俺の名前を呼んでください。もっともっと、ずっと…」
「うわああああなんか嫌だ高虎と同じ匂いがする嫌だ嫌だ早く正気に戻れ三成離れろ三成落ち着け三成!」
「…俺の前で、他の人間の名前を出すなんて…あなたはつくづく意地悪な人ですね。俺を嫉妬で染め上げることがそんなに楽しいですか?」
「あれごめんなんか変なスイッチ踏んだ?踏んじゃった!?それなら謝るからとりあえず離れろ三成なまえ兄さん怖いちょー怖い!!」
「なまえ兄さん…いや、なまえ」
「ひっ」
「このまま夜が明けるまで…夜が明けてからも、あなたがきちんと理解するまで、ずっと囁き続けてあげます」

俺がどれだけあなたをお慕いしているか。どれだけあなたを求めているか。

「隙あり」
「ヴッ…!」
「はっ!!小太郎!!!」

トチ狂った三成が俺にキスしようとした瞬間、ナイスタイミングで助けに来てくれたのは小太郎だった。うおおおおおお前と契約しててよかったわマジでえええええ…!!

さくっと三成を気絶させてくれたので、そのまま当初の予定通り近くの柱にくくりつけておいた。あ〜〜怖かった…性格だけならまだしも矢印操作も思いのままとか末恐ろしいわ。小太郎が間に合わなかったらどうなってたことか。

「マジでありがとな小太郎…怖かった…ほんと怖かった…」
「油断と隙しかないご主人様を持つと本当に苦労させられる」
「ありがとっつってんじゃんそういうとこ嫌い」
「子どもめ」
「るっせ」





何はともあれ、その後犯人があの悪党だということが発覚したので速攻で退治した俺なのであった。いくら操られているとはいえ我が可愛い可愛い()弟とあんなことをさせかけた悪党マジ許すまじ。あと俺の睡眠を邪魔した罪も重い。お説教だよ!!!(裏声)







190530


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