43


清正たちと別れた後、まずはおねね様の元へと向かった。お待たせしました例の物です〜つって戦利品(調味料系をいくつか)を手渡すとありがとねえとお駄賃を貰ってしまった俺(三十路)である。おねね様だけはほんといつまで経っても甘やかしてくるから恥ずかしいような嬉しいような。ごめんな清正恨むなよ清正。そうそう清正といえば〜と先程の謎の呼び捨てイベントについて話すとあの子達ようやく言えたんだねと嬉しそうに笑っていたので少し驚いた。あいつらそんな前から俺に呼び捨てしてほしかったの?なんだよそれなら早く言ってくれればよかったのに。全然呼ぶぞそんなもんいくらでも呼んでやるわ人類みな兄弟だもんな。どういう根拠だよってな。

その後もおねね様との世間話に花が咲き、気付けば一時間くらい話し込んでしまった。もう三成のやつも報告なんざすでに 終わってる頃だろう。ただでさえ遠征だったからその間寂しかったろうにさらに先程の謎イベントも相まってかーなりストレス溜まってるだろうな。ストレスというかさびしんぼゲージMAXだと思うんだよね多分。いやでもなんだかんだ言ってあいつももういい大人だしそんな大っぴらに寂しかったぞアピールなんかしねえか。まさかな。はははは。



「三成殿〜」

一人で盛大に無駄フラグを立てつつ三成の部屋に到着。おちょくるような間延び声で部屋主を呼ぶが応答がなかった。アレエ?しかしからす殿の力を持ってすればこの部屋の中に人一人分の気配が存在していることなど手に取るように分かるんだぜ。俺に居留守は効かぬ。覚悟しろ三成!

「入るぞー…えっ」
「………」
「え、ど、どしたん三成…」

さらっと襖を開けて侵入した俺ではあるがその足はすぐに止まることになる。なんか、なんかやばい。なんかこう、三成が、前世でいうところのクラウチングスタートみたいな体制になってこっちめっちゃ睨んでる。なにそれ怖い。今にも飛びかかってきそうだったので慌てて後ろ手で襖を閉めた。なんなんだよ野性動物の威嚇かよちょっと面白いぞ三成お前。

「…来るのが遅い」
「あ、やっぱ待ってた?その件はすまんついおねね様との話が盛り上がっちゃってさあ」
「………」
「い、いや、あの、ほんとどうしたみヅッッッ!!!!」

お面を外しながら近付いた瞬間クラウチングスタートの姿勢から飛び付いてきた三成と共に後ろに倒れた。今おもくそ舌噛んだと思ったぞあぶねえだろコラァ。

お前ほんとどないしたんやと腹に顔を埋めたままの三成の頭を軽く小突くが無反応である。寂しい。やっぱりあれか?寂しかったのか?遠征寂しかったのか?だから俺もつれてけって言ったのに…まあお前のためではなく真田兄弟とかくのいち見たさに行きたかったんだけどね。あと義トリオ結成シーン見たかったし。見れなかったけども。

「……この馬鹿」
「ええええ?」
「俺のいない間に吉継と何があった」
「何があったって…ほれ、あの、四国行く前に吉継川ポチャ事件あっただろ?あの時ちゃっかり素で絡んじゃって…最近そこほじくりかえされて今後も素で対応しろって言われたんだよ」
「………」
「でも高虎にバレんのも怖いし、二人の時だけだぞってことと、他のやつらには内緒なってこと約束してくれたから承諾したのにさァ…あいつだけはほんと…」
「…上田にいると言う可愛がっていたやつらとは誰のことだ」
「え?あー……うーん……めっちゃくちゃ昔のことだし名前まで覚えてねえな…生きてるかもわかんねえし…」
「…清正と正則にまで気を許しすぎだ」
「いやなにそれそこまで嫉妬する?吉継はともかくあの二人はお前と同じで弟分だし気を許すもくそもねえだろ」
「………」
「痛い痛い痛い無言で絞めるのやめて吐く吐く」

どの答えもお気に召さなかったらしくどんどん強くなる回された腕の力に苦笑いした。愛され過ぎるのも考えもんだぜまったく。

「大体なあ、俺の秘密知ってんのはお前だけなんだからそんなにいちいち嫉妬することねえだろ」
「おねね様だって知っている」
「けど今よりずっとずっと子どもだった頃の俺を知ってるのはお前だけだぞ」
「………」
「ってことで、いい加減機嫌直してくれる〜?」

よしよしと頭を撫でてやると、ようやく少しだけ腕の力が弱まった。

そりゃまあ高虎や吉継は良い友達だしおねね様は貴重な甘やかしてくれる要員だし清正と正則は可愛い弟分だしみんなみんな大切なことに変わりはないが、なんだかんだでこいつとの付き合いが一番長いし俺も無意識に贔屓にしてるとは思うぞ。いやほんとに。神様との約束を抜きにしたってな。

「俺言わねえだけでお前のことめっちゃ大事にしてるつもりなんだけどなァ」

……あ?待てよ、言わなくても伝わるだろってそれ俺が前世で無双プレイ中よく「ふざけんな甘えてんじゃねえぞ直接伝えろや三成そういうとこだぞ」つってぶちギレてたやつでは?俺同じことしてるのでは?うわあ恥ずかしい。今のなし。リセットさせて。

「…ま、まあ、言わなきゃ分かんねえよな、うん」
「そんなもの分かっている」
「え」
「結局お前の一番が俺だということは分かっている」

な、なんやこいつ…やっと顔上げたと思ったらくっそドヤ顔なんだけど…あれかな、つっけんどん成からチョロ成に進化したのかな。そうかもしれんな。俺としてはそれはそれで扱いやすいから助かるぞ。

「あー…うん、そうそう。なんやかんやで三成くんが一番ダヨ〜」
「当然だそうでなければ張り倒しているところだ」
「ウワアコワイ」

なんかもはやツンデレを通り越してる気がするんだが気のせいだろうか。俺の知ってるツンデレと違う…戦国時代風ツンデレってことなのかな。もうなんかよくわかんねえからそういうことにしとこう。

よし決めたぞ。今後また不機嫌になったら「お前がナンバーワンだ…!」つって対応することにしよう。毎日これぐらいデレてくれたら扱いやすいんだが、まあそれはそれで気持ち悪いだろうからこれくらいがちょうど良いのかもしれんな。とりあえずお疲れ様〜三成〜とヘラヘラ告げると再び俺の腹に顔を埋めた三成。は?

「なまえ」
「あ?なに?」
「…俺の一番も、お前だ」

くぐもった声が聞こえる。あー、うん、だろうね?と言いかけたが大人なのでありがとうとだけ返しておいた。秀吉には負けるだろうがだいぶ俺のこと好きだもんなお前。可愛いやつゥ〜。久々の佐吉きゅんモードに気を良くした俺はさらにわしゃわしゃと頭を撫でてやったのだが何故か腹パンされた。解せぬ。





190326


|