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『あなたという人は………本当に………本……当に……馬鹿なんですか?』
『いやでもあの色仕掛け作戦と言いますかなんと言いますか』
『言い訳しないでください蹴り倒されたいんですか』
『ヒエッ』
『今回は勝ったからいいもののこれで負けていれば切腹ものですよ?曲がりなりにもあなたはうちの主戦力なんですそれをもっと自覚してください残念なことにあなた一人を欠くとうちの戦力はほぼ半減すると言っても過言ではないのです逆に言えばあなたの取り柄と言えばその馬鹿みたいな武力だけなんですから色仕掛けなどという策が通用するはずないでしょうそれが分からないくらい馬鹿になったんですか?いや失礼あなたはもとより手のつけようのない馬鹿でしたねですがせめて馬鹿なら馬鹿なりにもう少し考えて行動してください』
『はい、あの…ほんと、すみませんでした…』
『謝罪など結構です行動で示してください』
『返す言葉もございません…』
『はあ、まったく…』



…はい、以上が戦後の超絶お怒りモード三成様による叱責タイムでした。これでもだいぶ省略した方だからね。ほんとは三時間ぐらい延々とみんなの前で怒られ続けたからね。まあ怒られるかな〜とは思ってたけどまさか「まずは土下座してください」から始まるとは思ってなかった…久々の激おこ三成…いや自業自得と言われればそれまでだがそれにしたってひどくね?俺のメンタルはもうボロボロよ…馬鹿のゲシュタルト崩壊…しかもただでさえ言葉でめっちゃ責められて辛かったのにプラスで高虎と官兵衛からの冷凍ビームばりの視線がヤバかったわ。あとあの吉継からも珍しくめっちゃ怒られた。囮の俺を差し置いて色仕掛けとは何事だ三年祟るぞって言われて半泣きになったわほんまごめんて。勝てたからええやん。嘘です反省してますもう二度としません許してくださいごめんなさい。

その後秀吉の手により四国が平定され、勢力はさらに拡大した。次はこのまま九州に行く感じだろうな。そんで最後は小田原城か。天下統一ルートもいよいよ大詰めってところだな。ゲームではあっという間だったがやはり現実は違うんだなあと痛感した。まあ、だからこそよりリアルというか本気になれるというか。何はともあれ今後もしっかり働かねえとなあ。




「むむっ!そちは城の中でも面をつけたままなのか?」
「!」

四国征伐から数ヵ月が経った頃、元親が城に来たとのことなのでこっそり覗きに行こうとしたら先に第三者に見つかってしまった。この明るくて可愛らしい声は、とそちらへ視線をやる。そこにいたのはガラシャと小少将だった。

「これはこれは…ようこそ大坂城へ、麗しの姫君方」
「質問に答えよ!その面は外してはならぬのか?そちは恥ずかしがり屋なのか?」
「気にしなくてもいいのよわらわちゃん。面の下なんて見たところでなんの面白味もないんだから」
「おや、四国では褒めてくださったのにつれないですね小少将殿」
「お世辞ってご存知?もしかして本気にしちゃったかしら?」

ですよねェ〜〜と苦笑いした。恐らくあの時小少将は小少将で隙見て俺のことサクッと殺ろうとしてただろうしな。多分三成たちが激怒してたのはその点だろう。いくら可愛いからって大人しく殺られるわけねえっつーのに…

聞けば二人も大坂城見物を兼ねて元親に着いてきたらしい。まあゆっくりしていけと秀吉でもないのに偉そうに宣う俺よ。秀吉もそう言ってただろうしへーきへーき。まあ内部から攻撃しだすだなんて馬鹿なことはしねえだろうしな。あとガラシャが可愛くて死んでる。もっと魔性身に付けたら面の下見せてやるぞって言ったら小少将に本気で睨まれたから即冗談だよ〜と付け加えておいた。美女の睨みほんとこわい。

「待たせたな…む、お前は」
「あ、どうも元親殿。お久しぶりです」
「たしか、からすと言ったな。四国では世話になった」
「いえ、こちらこそ屈強な四国の皆様には大変お世話になりました」

ふぁーーーついに現れたと思ったら容赦なく嫌味言われたでござる。しかし俺の嫌味返しに対してなぜか穏やかに笑った元親。あれ?嫌味ではなかったのか?

「堂々としている…さすがは羽柴の飼い烏といったところか」
「(あ、やっぱ嫌味言われてたわ)…ここで少しでも罪悪感を感じているようでは、私は今日この日まで生き抜けなかったでしょう。それに、散っていった仲間に申し訳が立たない」
「…ふっ、上等」
「!」
「ただ腕の立つ面をつけただけの男だと思っていたが、しっかりとお前なりの信念を持って生きているのだな」

生上等キターーと思ったら今度は褒められた。信念大事よ信念。そこブレちまったらマジで生き残れねえからな。ぶっちゃけ俺は未来人なのでこの先も史実通り生きていくだけだがな。その結果として最強お面武士からす殿が出来上がっただけだがな。

「…次に味方として戦場でまみえる日を楽しみにしている。蝙蝠と烏の共闘…魂と魂がぶつかり合い生み出される激しき音色を見せつけてやろう、凄絶に!」
「小少将殿、わらわ殿、また大坂に来られた際にはとびきり美味しい甘味屋へご招待しますね」
「ほむ!楽しみにしておるぞ、からす!」
「糖分の摂りすぎは良くないけど、少しだけなら大丈夫よね?あたしも楽しみにしてる」
「おい無視するなからす」

やっぱりただのイケメンキャラなんて無双に存在しねえんだなと確信しました。まる。





190313


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