▼ ギャップ萌えにもほどがある
(酔っぱらっちゃった)
@ノーマル
(同居後)
『みょうじさんはもっと俺に甘えるべきです!』
成人してすっかり社会人らしくなったみょうじさんに対してお酒片手にそう叫んだのはたしかほんの小一時間前だったはず。
「……みょうじ、さん…?」
「んー……?なあにぃ…?」
「………酔ってま」
「よってねえしい」
少し怒ったような顔をして即答したみょうじさんだが、その顔は不自然なくらい真っ赤だし、いつもより語尾伸びてるし、何より酔ってねえなら俺の膝を枕にして寝るはずがない。腹に顔をすりすりしてくるはずがない。おかしい。完全に酔ってる。断言できる。
そりゃまあ俺だって決して下心がなかったわけじゃない。お酌するから甘えてほしいだなんてただの口実で本当は酔った勢いかなにかで久々にイチャイチャというかベタベタというかまあぶっちゃけると夜の営みを…とかなんとか思ってたのに。そういや酔ったとこ見たことないけどまあ明日は休みだからゆっくり攻めていけばいいかなんて思ってたのに。まさか、酔うと甘えたになるなんて。なんのご褒美だ可愛すぎかよ。
「ああああー、ダメ。ダメだ。みょうじさんダメ」
「なぁにがあ」
「可愛すぎ」
「はあ?おれはぁかわいいんじゃなくてぇかっこいいんですう」
「そうですねみょうじさんはいつでも世界で一番かっこよくて可愛い俺の恋人ですからヤらせてください」
「ええーおまえそればっかりじゃんかあ」
「そんなことないです最近ご無沙汰です」
「やだやだつかれてるからやだあきょうはもうねるう」
「んんんんんん可愛いけど俺ももう我慢すんのやだなああああ」
はあっ、なに、この、可愛い生き物…可愛すぎてついうっかりそうですね今日はもう一緒に寝るだけにしましょうかって言っちまいそうになった。けどダメだこんな機会そうそうないからな。もしこの状態で抱いたらどうなるんだ抱いてる時もこんな甘えただったらどうするんだ今度こそ俺この人のことぶっ壊しちまうんじゃないだろうか。未だにぐりぐりと顔を擦り付けてくるみょうじさんのせいで俺のあそこがやばいんですが。
「…くろだはさあ」
「なん、スか(やばいそろそろやばいほんとにやばいマジでやばい)」
「おれのおねがい、きいてくんねえのぉ…?」
「…………すいません」
この後めちゃくちゃ抱いた。
@月光
(本編endガン無視で普通に過ごしてる)
『悪いな雪成、頼んだぞ』
記念すべき20歳の誕生日だからと父さんの酒に付き合わされたなまえはもうほとんどふらふらになっていた。父さんも父さんだけど、健気に付き合うなまえもなまえだ。初めて飲むくせに無茶しやがって。まあこれはこれで役得だけど、となまえを背負ってゆっくり階段を上がった。
「ん、ふふふ…あー…ごめんなあゆきなり…」
「謝る余裕があんなら歩けっつーの」
「ふふ、ふふふ…」
表面上は冷たくそう吐き捨てたものの、正直ちょっとやばい。背中ある心地いい重み、頼りなさげに回されてる腕、階段を一段上がる度に頬に当たる顔、耳元にかかる吐息。それら全部が熱くて仕方ないのは、こいつが酔っぱらったからってだけじゃねえのは分かってる、けど。
「…ったく、役得なんだかそうじゃねえんだか…」
こうしてまた地元に帰省して働いてるからとはいえ、俺たちの関係はまだぐちゃぐちゃなままだ。その上でなまえのこの態度。理性がないから仕方ないって簡単に納得できるほど人間出来てない俺にとっちゃとんだ生殺しだ。
まさか酔っぱらうと笑い上戸になるとは。普段はゴミ見るみてえな目で見てくるくせに、うってかわってニコニコヘラヘラしながら俺にまで笑いかけてきやがる。
「ほら、着いた。降ろすぞ」
「ん」
真っ暗な部屋の中、廊下の明かりを利用してベッドまでなまえを運んだ。そのままそっと降ろしてやってもまだ笑ってる。多分頭ん中すげえフワフワしてんだろうな、こいつ。
「…じゃあな。早く寝ろよ…っ!」
この状態でこれ以上側にいるのは得策じゃねえかと、さっさと部屋を出ようとした。しかしそれは簡単に阻止されてしまう。他でもないなまえ自身の手によって。
「……なんだよ、離せ酔っぱらい」
「…なあ、ゆきなり」
「………」
「おれのこと、かんたんにおんぶして…ちからもちになったなあ」
にこにこふわふわ。ああもう、癇に触る。どうせ寝て起きたら、また素っ気なくしてくるくせに。
「また、さあ…おれがあるけなく、なったら……よろし…く…」
だんだん小さくなっていって、やがて聞こえなくなった言葉。しばらくすると寝息が聞こえてきたのでため息を吐いた。どんな言い逃げだよ。
“また”があるなんざごめんだ、と思ったが
「…じゃあ俺以外の前で絶対飲むんじゃねえぞ」
まあもう聞こえてねえかと、薄く笑いながら触れるだけのキスをしてやった。
160927
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