連載短編 | ナノ


▼ 診断詰め合わせ2

(いろんなところに噛みつかれた)
(※全体的に雰囲気注意!)




@ボケナス



やっ、べえ。なんか、今日、やべえ。

「……ん?どうした?」
「い、や?別にィ?」
「?」

どうしよう。なんか、すげえ、シたい。なんで今日に限ってって聞かれりゃ自分でもわかんねえんだけど、なんか今すげえシたい。なんでだろ。理由が明確にわかんねえから余計困惑する。でもヤりたい。抱きたい。なんでだ。うわあ。すげえヤりたい。

いつもならこの衝動のままがっつくか、もしくはそれとなくほのめかして上手いことそういう流れに持ってくんだけど、今日は運の悪いことにそういう手が使えなかった。というか行為自体が多分無理だ。昨日ちょっと無茶しすぎて怒られたとこなんだよなァしばらく控えてほしいって泣かれちゃったんだよなァ自業自得なんだよなァでもヤりてえなああああああどうしよう。マジで、ど、どうしよう。もう一度ちらりとなまえを見るけどケータイを触ってて気付いていない。無理強いしたら今度こそ一生しないとか言われそうだしここは大人しくさっさと部屋に帰るべきか。ああけどダメだ触りてえちょっとだけでいいから触らせてくんねえかなダメかなほんのちょっとでいいんだけど。

んんんんと頭を抱えそうになった時、ふと、ベッドに投げ出されてた足が目に入った。

(………怒るか。泣くか。引くか。笑うか。どれだ)

どういうリアクションが返ってくるかはわかんねえけど少し魔が差したということで許してほしい。運良く喘ぎ声の一つでも聞けりゃそれオカズにして一人で抜くからさァ。つかそこまでするとかどんだけ情けねえんだ恥ずかしい。けど我慢できねえし、と、足の指先に顔を寄せて、親指にやんわり噛みついた。

「うえっ!?」

ビビったような声が返ってきて、それじゃないんだよなあと思いながら他の指を食む。え、あ、え、と困惑するなまえ。声に合わせてピクピク動く指が可愛い。

「あ、ちょっ、と、やす?」
「にゃにィ?」
「にゃにじゃなくて、あの、足…ひゃあっ」

あ、きた。ここだ。指の付け根だ。少しだけ強く歯を立てるとまた聞こえた高い声。あーもう可愛いこれだけで2、3回抜けそうごめんねなまえチャン。すっかりバカになっちまった頭でぼんやりそんなことを思いながら顔を上げると、真っ赤になって俺を見るなまえと目が合った。あれ、けど、笑ってる?

「……仕方ないなあ…」
「えっ、」

それって…と体を起こすと、なまえはしょうがないなと言わんばかりに小さく頷いた。なんだよそれ俺めちゃくちゃ恥ずかしいやつじゃねえか最初っから素直に言えばよかったくっそニヤニヤしてんじゃねえぞコラ!





@無口



いつもいつも高い位置にあるこいつの顔が、俺と同じ位置か、もしくはそれよりも低い位置に来る瞬間は限られてる。例えば屈み込んでいる時だとか、俺の声が聞こえなかった時だとか、キスしようとする時だとか。その時、顔もそうなんだけど、もう一つだけよく俺の目を奪っちまう部分があった。欲を言えば触れたいんだけど、普通の人間なら誰だってビクつくか身の危険を感じるような、そんな場所。だから俺もなかなか口には出せなくて、今日までずっと耐えてたんだが。

(……あー……噛みてえ…)

屋上で二人して並んで座って昼飯を食ってたんだけど、なんでもないような顔をしながら、すぐ隣に座ってるみょうじの、喉元を見つめる。けどそんなとこ、さすがに怖がるよな。ただでさえビクビク体質なのにそんなことしたらヘタすりゃ泣くよなこいつ。ダメだよな。絶対ダメだよな。

「ん…このパン、今日はサクサクだなあ…」

もそもそパンを食べてるみょうじにそうかヨと返事をしながらも目は相変わらず喉元に。やべえなクセになってるじゃねえかこれ。さすがにそろそろ感付かれる。そう思って視線を外そうとしたら、タイミング悪くみょうじがパンを飲み込んだらしく、喉が上下に動いた。

(あ、ダメだ)

「…荒北くん?どうし」

気付いたらもうみょうじの制服を掴んでて、そのままがぶりと噛みついちまってた。

「ぁ、え、」

不安げな声と震える体に頭ん中で謝罪してみたものの、止まらなかった。ほんのり汗の味がする。みょうじの匂いがする。脈打ってビクビクしてる。これ、全部、俺の。俺のなんだ。このまま、噛み千切ったら、死んじゃうなこいつ。そんな物騒なことを考えながらもここから離れられない自分がいた。時折軽く吸ったり舐めたりしたら、聞いたことないような甘く掠れた声と、熱い息がすぐ上から降ってきて、もうなにも考えられなくなる。何度目かの謝罪をもう一度呟いて、今度はすぐそこにある唇に噛みついた。







@ノーマル




「げっ」
「え?」
「最悪…」

食堂からの帰り道。ギリギリまで一緒にいたくて強引にみょうじさんの教室まで着いていこうとしていた矢先のことだった。不意に不機嫌そうにそう言うと、しゃがみこんで足首辺りを擦ったみょうじさん。なんだ、何があったんだろう。

「どうかしました?」
「蚊にかまれた」
「はあ!?」
「うるさっ…ちょ、おい!こら!」

しゃがんだみょうじさんの足首を掴んで持ち上げた。そのせいで尻餅をついていたけどそれどころではない。蚊って。咬まれたって。それって血ィ吸われたってことだろ。蚊の分際で、虫の分際で、みょうじさんに触れるどころか血を吸うだなんて、

ぷくりと赤く膨れたそこがひどく恨めしい。むかつく。ここだって立派な俺のものなのに。虫ですら触らせたくない。むかつく。むかつく。

(消毒しねえと)

とにかく頭に浮かんだのはそれだけだった。ここがどこで今どういう状況なのかもすっ飛んだまま、普段部屋でしてるように口付ける。おい、と怒った声が飛んできたけど照れ隠しだってわかってる。そのまま優しく撫でるように舐めあげて、甘噛みして、

「こ、の…ボケェ!!」
「うぶっ…!」
「こんなとこで発情してんじゃねえよ次やったらぶっ殺す!!」

掴んでいた足がそのまま俺の顔面に飛んできた。いってえ。めちゃくちゃいてえ。つか発情なんかしてねえし消毒しようとしただけだしチャイム鳴っちまったしみょうじさん逃げちまったし…全部全部蚊のせいだ…!


(目が完っ全にヤる気満々だったからなお前)





@月光
(中1主と小6黒田)



「……眠いなら部屋に戻ってなよ、雪成」
「ん…だいじょうぶ…」

兄であるなまえのベッドの上で二人して寝転び、思い思いのことをしていた。なまえは学校で借りてきた野球の本を読んでいて、雪成はそんな兄の足元でうとうとと体を丸めている。元はと言えばなまえが自分に構わずその本に夢中になっているのが悪いのだと叫びたかった雪成だが、大好きな野球のことで邪魔をしてしまえば嫌われてしまうかもしれない。そう思うとなにも言えず、ただ我慢することしかできなかった。雪成とて大好きななまえとの時間を誰かに邪魔されればたちまち怒ってしまうだろうし、それが誰であろうと嫌な感情しか向けられなくなる。それがわかっていたから、こうして襲ってきた眠気にも負けないよう歯を食いしばってでも黙ってそばにいようとしているのに。

学校が変わった。土日も練習に行くようになった。二人で過ごす時間はどんどん減っていく。それが寂しくて悲しくて、枕を濡らして眠る夜さえあった。野球なんてなくなってしまえばいいのにと、心底思った。何度も何度も。毎日毎日。今日もそうだった。今この瞬間だって、大好きななまえを独り占めしている。

また今日も構ってもらえずに終わってしまうのか。そう思ったと同時に、すぐそばにあったなまえの足が動いた。少し位置がずらされたそれは、雪成の顔のすぐそばにある。練習でたくさん鍛えている足。早く走れるように毎日ランニングで酷使されている足。

(……これが、なくなれば、野球なんか…)

虚ろな脳内が導きだした答えはひどく歪んでいて、けれど雪成はそれに気付けない。いっそ食べてしまえばいいと、恐る恐る目の前に差し出された足首に噛みついた。

「いった!」
「!」

不意をつかれたなまえから大きな声が飛んできた。途端に我に帰った雪成はゾッとした。自分は今何をしていたんだろう。兄が驚いている。困惑したような顔で自分を見ている。嫌われてしまったかもしれない。いろんな考えが浮かんできて、それは涙となって雪成の目を濡らしていった。

「あ、ご、ごめん、なさ…」
「…寝惚けてたのか?大丈夫?」
「っ、」

体を起こしたなまえは、少しだけ困ったように微笑みながら雪成の体を抱きしめた。目の敵にしていた野球の本は隅に追いやられている。今、なまえは、自分を優先してくれている。その事実だけが雪成の心を満たしていった。

「…だい、じょうぶだよ、兄さん」
「もう遅いし、今日は俺の部屋で寝るか?」
「うん」

ぎゅうっとなまえの体にしがみついて、大きく息を吸った雪成。大丈夫。兄の一番は自分だ。そう言い聞かせながら、ずっとそばについて回っていた睡魔に意識を委ねた。







マネ主の足に照れながら噛み付くと、「分かった」というように頷かれました。

無口の喉元に愛しげに噛み付くと、熱い息を吐いています。

ノーマルの足首に愛おしそうに噛み付くと、走って逃げられました。

兄主の足首に恐る恐る噛み付くと、困った様に微笑まれました。
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難しい(げきおこ)


160618

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