「…どうしようかなあ…」
「んー」
「このセーター…せっかく貰ったんだし一度は着ないとまきに失礼だよな、やっぱり」
「んー」
「まきと遊ぶときだけ着ていこうかな…でもこれで外出歩くのは…うーん…」
「んー」
「……もしかしなくても聞いてないだろ、やす」
「んー」

じとりとこちらを見つめるなまえ。聞いてるのは聞いてる。そんなセーター趣味の悪さ以前に他の男から貰ったもんなんだから着てほしくねえとか遊ぶなら俺も付き添いだ馬鹿野郎とかツッコミ所は山ほどあるが今はそれどころではなかった。

東堂と巻島が部屋を出た時どさくさに紛れて一緒に出て、自分の部屋からこっそり持ってきたプレゼント。幸か不幸か悪趣味セーターとにらめっこしてるなまえは気付いていない。渡すタイミングは完璧。けど、問題は、俺の気持ちだ。こんなもん渡してほんとに喜ぶのかなァとか引かれねえかなァとかキャラじゃねえよなァとかうだうだうだうだ……あああああああもうこんなもん当たって砕けろだやってやれ男だろ荒北靖友ォ!!

「なまえチャァン!」
「はいっ!?急になん…」
「ほらよ!」
「っ!」

赤い包みを投げ渡すとボスンとキャッチしたなまえ。

「やす、これ…」
「クリスマスプレゼント。中見ても笑うなヨ」
「あ、ありがとう…!」

すっげー嬉しそうに笑って、ガサガサと袋からプレゼントを取り出したなまえは、それを見てまた笑った。

「っ、笑うなっつったろォ!?」
「だって、これ…っ、可愛いな…!」
「あああー、だから嫌だったんだヨ!クソッ、普通にネックとかにすりゃよかった!」

なまえの腕の中には真っ黒のふわふわ毛皮を生やした狼のぬいぐるみ。俺だって買う時は抵抗あったけど、こっちのが分かりやすく喜んでくれるだろうなって思って、けど、

「いや…あの、この子が可愛いのもあるんだけどさ、やすがこの子をどんな顔して買ったのかなって思うと…ははっ…」
「っせー笑うな!」
「はー…ありがとう、やす。抱き枕にしたらいい夢見れそうだ」
「…あー、好きに使えヨ。オメーのなんだしィ」

ひとしきり笑ったあと、また嬉しそうにぎゅーっとぬいぐるみを抱きしめる姿を見て、やっぱりこっちでよかったなと一人安堵した。

「……でも、」
「うっ」
「俺の前ではあんまベタベタすんなヨ、妬くからァ」

ぬいぐるみごとなまえの体を抱きしめる。擦れる頬が暖かいのは真っ赤になってる証拠だろ。

ぬいぐるみにまで妬くなって?仕方ねーだろ、好きなんだから。




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