「…ごちそうさまでした」
「おん」
「美味しかったです」
「知ってる」
「これ、俺が当ててよかったです」
「はあ?なんやそれ。これぐらいのケーキ自分で作れるやろ」
「俺が作ったのとブランチさんが作ったのじゃ、貰うにしても食べるにしても全然違うでしょ」
「……ようわからんけど喜んでもらえたんやったらええわ」
「なんでわかんないんですか俺にはそれがわかりません」

ブスッと膨れるなまえは俺を睨むけど、やっぱりわからへん。

「そんな欲しいんやったらいつでも作ったるやんけ」
「だからそういう問題じゃないんですってば…」
「なんやねんそれ」
「…例えば俺のプレゼントがケーキだったとして、ココさんやサニーさんに食べられたらどう思います?」
「むっちゃ腹立つ」
「それと一緒ですよ」
「…けどお前が当たったやんけ」
「はい。だから俺が当ててよかったって言ったんですよ」
「……わかりにくい」
「ブランチさんが鈍感なだけでしょ」
「うっさいわ」
「……ブランチさん」
「あ?って、」

どこから取り出したのか、なまえの手には黄色い箱のプレゼント。

「…これ、」
「メリークリスマスですブランチさん。開けてください」
「……クッキーやん。こんなんいつ焼いてん」
「企業秘密です。ほんとは俺もケーキ作ろうかなって思ってたんですけど、クッキーにして正解でしたね。危うく被るとこだった」

箱一杯に詰められたクッキーには、一枚一枚器用に何か描かれていた。雪だるま、星、靴下…あ、

「なんやこれ、天狗もおるやん」
「俺もいますよ、ほら」

なまえが取り出した一枚のクッキー。そこには鬼がいた。どこか嬉しそうにはにかむこいつがひどく愛しい。

「…可愛いことするやんけ」
「それほどでも…むぐっ!」
「ほなこれで交換な」

持っていた天狗の描かれたクッキーを無理やり口に押し込んで、代わりになまえの手にあった鬼の描かれたクッキーを食ってやった。ついでとばかりに唇が手に触れた瞬間、あからさまに固まってしまったなまえ。

さっきまで人のことを鈍感だなんだと余裕そうにしていた顔が真っ赤になっていく様を見て、してやったりとクッキーをもう一枚頬張った。





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