「今日はありがとうね小太郎くん」

部屋の後片付けをしながらそう言ったなまえ。他の二人は明日も仕事なのでと泣く泣く帰ってしまい、必然的に二人きりになった今、そんな言葉を投げ掛けられた。

「……礼を言われる理由がない」
「あるよ。来てくれてありがとう。君が楽しかった…かどうかは分かんないけどね」
「我よりも他の者を誘えばよかったのでは、とは思ったがな」
「まあそう言わないでよ。プレゼントだってちゃんと用意してくれてたし」
「………」
「ということで、はい!プレゼント」
「!」
「プレゼント交換の時に僕のが当たっててもそうでなくともわたそうと思ってたんだ。どうぞ」

手渡された緑色の包みの箱を見て驚く。手のひらサイズのそれを押し付け、開けて、と急かすなまえ。

「……ハンドクリーム…?」
「正解!ほら、小太郎くんてそういうの気にしなさそうだなーって…あ、やっぱり」

小さなハンドクリームごと手を掴まれた。時期が時期だけにひび割れが多い手の甲を見て、まるで自分の物のように痛そうに顔を歪める。たしかにてんで気にしたことなどなかったなと他人事のように思った。

「ダメだよそのままにしちゃ。痛いしバイ菌入るでしょ」
「…考えたこともなかったな」
「考えなさい。今日からちゃんとこれ使うんだよ」
「気が向いたらな」
「次見た時まだ痛々しかったら僕怒るからね」

それはつまり、治さなければその分また気にしてもらえるということに繋がる。せっかく貰ったプレゼントをありがたく使うべきか、わざと放置しておくか。考えるまでもなかったが、

「…ありがとう」
「いいえ。どういたしまして」

己よりも小さいくせに、背伸びをしてまで頭をくしゃりと撫でてくる。まだ幼かったあの頃からの兄気質は直らないらしい。

きっとこのハンドクリームを使うことはないだろうが、今は素直に頷いておくことが得策だろう。






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