よそでやれ | ナノ


よそからのお客様  



「ちょっと休憩行ってきまーす!」

ごめんなーと続けて教室を出た。まあ休憩と言ってもちょっとブラブラするだけだけど。みんなと同じ時間休憩するわけにはいかない。ちょっと他のクラス覗いたらすぐ戻ろう。

「なまえ」
「!」

そういえばどこかで執事喫茶とかやってなかったっけ…なんて考えてたら、後ろから誰かに呼ばれた。あれ?この声、

「…えっ、あっ、ま、まき!?」
「クッハ!合宿以来だなァ」
「うわあまきだ本物だ!久しぶり!一人で来たのか!?」
「いや、金城と田所っちも一緒。まあ今は別行動中なんだけどな」

前髪をかきあげながらそう言って笑ったのは総北のまきだった。わざわざ千葉から来てくれたんだと思うとすごく嬉しい。あ、もしかしてメイド喫茶のこと聞いてるのかな。

「ぱちから聞いたのか?メイド喫茶のこと」
「ああ。けどお前メイド服着てねえじゃねえか。話が違うっショ」
「俺はメイドじゃなくて支配人だからな」
「支配人って…そりゃまた立派なご身分で」
「ふっふっふ、かっこいいだろ」

そうかそうか、やっぱり聞いてたんだな。それなら場所はすぐそこだし、連れてってあげよう。ぱちも喜ぶだろうしな。

「なあまき、メイド喫茶の教室すぐそこなんだけど」
「お前もしかして今時間空いてんのかァ?」
「え?あ、まあ、一応」
「ふーん……なら、ちょっと付き合えよ」
「おう?けど、メイド喫茶は…」
「あとで金城たちと合流したら行くショ。だから今は黙って付き合えって」

な?と笑ったまきは、一体どこに行くつもりなんだろう。













「……おお、似合ってるっショ!」
「ショ!じゃないぞ…お前なあ、どこに行くんだと思ったら…」

恐らく休憩中だったであろうなまえを連れてきたのはコスプレコーナー。本来こいつのメイド服が見れると思ってやって来たのに支配人は着ねえっつーから拍子抜けだったけどな。面白いコーナー見つけててよかったぜ。

試着室から出てきたのは、箱学の女子用制服を着て呆れ顔をしたなまえ。

「けど、ヘアピンまで付けてノリノリじゃねえか」
「あの頭のまま着てもおかしいからな。これでどこからどう見ても女子だ!」

なんとなく楽しそうに見えるのは俺の気のせいじゃないだろう。そういや専用の撮影スペースもあったんだっけか?

「なあなまえ、記念に一枚撮っとこうぜ」
「えっ、このまま!?」
「当たり前だろ?すんませーん、写真お願いしたいんスけど」
「俺だけコスプレってなんかおかしくないか…」

不服そうにぶつぶつ文句を言っているなまえの手を引き、椅子やら小道具やらが置かれた撮影スペースへ移動した。

けど、ただ単に撮るだけならつまんねえよな?

「…なまえ、ちょっと遊ぶか」
「へ…どわっ!!」
「あっ、いいですねー!カップルみたい!」

撮影用にとケータイを渡したカメラマンが笑ってそう言うと、なまえは顔を真っ赤にして俺を睨み付けた。椅子に座った俺の横にちょこんと立っていたなまえの腕を引っ張って、そのまま膝の上に乗せる。それだけだ。それに、

「本気にすんなよ。あくまでそういう設定っつーこと」
「そ、それにしたってお前…!」
「あ、ほら、撮るっショ」
「くっそ、覚えとけよまき!」

そう怒鳴りながらも、頑張って笑顔を作ろうとしていたなまえが面白くて仕方なかった。

まあ、俺としては本気にしてもらってもいいんだけど。口には出さず、こっそり後頭部にキスをした。






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