よそでやれ | ナノ


ご褒美はやっぱり…  



「カルビちゃーん、休憩時間でーす!」
「!」

カランカランとベルを鳴らしてカルビちゃん…もとい銅橋くんを呼んだ。やっとかよと大きくため息を吐いた彼に苦笑い。

「はは、お疲れさま。それじゃ行くか!」
「は?行くってどこに…」
「着いてからのお楽しみだ!レッツゴー!」
「え、ま、待てよみょうじさん!こんな格好で廊下出れっかよ!」
「もう散々見られたんだから今さらだろ?ほら、急いだ急いだ!」
「くっそ…!」

嫌がる銅橋くんを無理矢理言いくるめて、当日になったら絶対連れてってあげようと思っていた目的地まで手を引いて走った。












「……え、」
「さあ遠慮することはないぞ。俺の奢りだ!好きなだけどうぞ!」

どこまで走らされるんだと、好奇の眼差しを飛ばしてくる連中を睨み付けながらやっとたどり着いたのは、

「…肉巻きおにぎり……」
「おう!」
「…………」
「ん?どうした?出来立てだぞ?」

食べないのか?と首を傾げるみょうじさん。たしかに目の前にある豪快に肉を巻かれたおにぎりはほかほかと湯気をたてていて、早く食えと言わんばかりに誘ってくる美味そうな匂いもたまんねえ。

けど、なぜかそれは俺の前にしか置かれていなかった。

「…あんたは食わねえのかよ」
「俺?俺はいいよ。まだまだ平気!でも銅橋くんは疲れてるだろうしお腹も空いてるだろ?気にしなくて良いから食べなよ」

にこにこ笑うみょうじさんは言葉通りまだまだ元気そうだった。まあ、そう言うなら喜んで食うけど…

「それに、」
「!」
「やすもそうだけど、銅橋くんもすっごく嫌がってたろ?まああのリアクションは予想してたけどさ、それでも今日もちゃんと頑張ってくれた。そのお礼だ!」

それに休憩後もまた頑張ってもらわなきゃだし、といたずらに笑ったみょうじさん。ずっと思ってたけど、この人、たまに無茶言うかと思えばこうやって変に律儀だし、不思議な人だし、なんつーか、ほんとやりづれえ。どっちかっつーと苦手なタイプだ。

「……やっぱあんたも食え」
「え?や、だから俺は」
「うるせえいいから食え!俺一人でこんなに食えっかよ!」
「いやいやそれは嘘だろ!普段はもっと食べるじゃんか!」
「こ、このあとまた、メイドしなきゃいけねえのに、肉ばっか食ってらんねえだろ!」
「!」
「四の五の言わずに食えってんだよ、ほら!」

ずい、と一つ差し出す。不思議そうに目を瞬かせたかと思うと、困ったような嬉しそうな、そんな笑顔を見せたみょうじさん。ありがとうと受け取った肉巻きおにぎりを美味しそうに頬張る姿を見て、そこでようやく俺も一口頬張った。うめえ。

やりづれえし苦手なタイプだけど、いつも俺や他のメンバーのことをよく見てくれてるこの人のことは、嫌いではなかった。





160520

[ ]