よそでやれ | ナノ


これだから天然は困る  



「実は一回でいいから使いたいって思ってたんだよなー」
「そうなんですか〜。じゃあみょうじさんも使っていいですよ?」
「えっ、ほんとに!?じゃあちょっと今日使ってみる!」

練習前、葦木場と楽しそうに話してるなまえさんを見つけた。ニコニコポヤポヤ。どう表現したらいいのかわかんねえけど、とにかく柔らかい感じの雰囲気だった。あの二人が揃ったらいつもそうだ。

「あ、ユキちゃん来ましたよ」
「!」

葦木場が俺を見つけてそう言った。するとすぐ反応して俺を見つめたなまえさん……あ、なんか悪い顔してる。なんだその明らかになにか企んでますって顔は。表情隠すの下手か。

てか、なんだ、俺関係の話でもしてたのか?まあなにか引っ掛けてやろうってことだとしても、この人相手なら大丈夫だろう。この手の類いは他の先輩方の方がひどいからな。

「…なんスか二人して。俺の話してたんスか?」

呆れ顔を隠しもせずにそう聞くと、悪い顔がにやにやとしだしたのでさらに極悪顔になっていた。それすら可愛いなんて思ってしまう俺はもうどうかしてるんだろううるさい自分でわかってるわほっとけ。

「……で?なんスかその顔」
「ふっふっふっ」
「………」
「ユーキーちゃんっ!」




「……あ、あれ?おーい、くろ、聞いて…どうしよう葦木場くん聞いてない(こそこそ)」
「おかしいですね、俺には聞こえてたのに…あっ、もしかしたら声が小さかったのかも(こそこそ)」
「マジか!よし、なら…ユキちゃん!!」
「………」
「……あれえ!?目は合ってるのに無反応だぞ!?(こそこそ)」
「ユキちゃん意地悪ですね、今のは完全に聞こえてるはずですよ!(こそこそ)」
「くろ!先輩のこと無視するなんて失礼だぞ!」
「そうだよユキちゃん!みょうじさんずっと呼んでみたかったって言ってたのに!」
「よーしそっちがその気なら俺だって負けないからな!ユキちゃんユキちゃんユキちゃんユキちゃんユキちゃんユキちゃーん!!」
「巻ちゃん巻ちゃんうるせえ東堂さんかあんたは!!」
「あっ、反応した」
「たしかに今のみょうじさん、東堂さんみたいでしたよ」
「バレた?ちょっとイメージしてみた!ははは」
「はははじゃねーよなに考えてんだあんた!!」
「え、な、なに考えてって…よ…呼んでみたかっただけなんだけど…」
「あー!ユキちゃんがみょうじさんのこといじめてる!やめてよユキちゃんちょっと俺の真似したからってそんなに怒らないであげてよ!」
「そこで怒ってんじゃねーから!てか俺怒ってねーから!全然怒ってねーから!」
「明らかに怒ってる…顔まっかっか…」
「もう行きましょうみょうじさん。今日はユキちゃん機嫌悪いみたいだから、また今度呼んでみましょう」
「そ、そうだよな…いきなりちゃん付けしたから気を悪くしたのかな…まずはさん付けにすればよかったかな…」
「いや、そういう問題じゃなくて…あああああああああもうほんとやりづれえ!!」


そういう不意打ちほんと勘弁してくださいってば!!





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