よそでやれ | ナノ


合宿一日目:ケンカするほど  



風呂に向かう途中、曲がり角の先からぱちの声が聞こえた。誰かと言い合いをしてるような…



「だからドローにしよう!」
「もうそれでいいショ、めんどくせー…あ、」
「おお、まきもいた!」
「なまえじゃねえか。今から風呂かァ?」
「おう…あ、君、えっと…思い出した!小野田くんだ!」
「おっ、お久し振りです、みょうじさんっ!」
「話すのはあの薬局ぶりだよなあ。伝えるの遅れちゃったけど、優勝おめでとう」
「ひょわあああああそそそそそそんな恐縮ですありがとうございますううう!!」
「なんだなまえ、メガネくんと知り合いだったのか?」
「インハイの時に少しな…それにしてもすごいな、クライマー祭りだ」

そういえば総北も来てたんだったな。なんという偶然。ふくに聞いた時はそれはそれは驚いた。

ぱちもまきも小野田くんも凄腕クライマーだもんな。まさか三人とも仲良しこよしでお風呂に入ろうとしてたのか?クライマー談義でもするのかな。邪魔しちゃ悪いか。

「ちょうどいい。俺も入るから一緒に入ろうぜなまえ」
「え?」
「んなっ!ふざけるな巻ちゃん!さっきは時間ずらして入るとか言っていたではないか!」
「覚えてねえショそんな昔のこと…」
「ほんの数分前だが!?」
「入っていいのなら入るけど…そういえば、さっきなにか言い合いしてなかったか?」
「よくぞ聞いてくれた!実はさっきまでとある勝負をしていたのだが、決着がつかなくてな」
「ついてたっショ!小野田が俺を選んだんだから俺が勝ってただろ!」
「いーやあれはノーカウントだ!反則だ!もし最後に来ていたのがメガネくんではなくなまえであれば俺が勝っていた!」
「そういうの負け惜しみって言うんショ」
「たしかに」
「納得するななまえ!!」
「あ、あの〜、そろそろお風呂に…」
「だいたい金城の一票からおかしかったんだ!あんなあからさまなお情けの一票だって本来ならノーカウントだぞ!」
「なんっでそこまで戻すんだよ!それを言うなら真波の一票だって義理だっつったっショ!」
「ちーがーうー!」
「駄々こねんな!」

「あ、あの〜……」
「…先に入っとこうか、小野田くん」

やっぱりあいつら、すっごい仲良しだよなあ。小野田くんとそう笑い合いながら、一足先に風呂場へ向かった。



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