よそでやれ | ナノ


合宿一日目:旅館に到着  



「着いた!旅館!でっかい!」
「大変だフク、小学生が紛れ込んでるぞ」
「ぱちが意地悪だ!だってでっかいじゃん!」
「ほんとだネェなまえチャンでかいネェでかいでかい」
「ふく!ぱちとやすがいじめてくる!」
「旅館のでかさなど合宿には関係ない」
「しん!ふくが冷たい!」
「これでも食って落ち着けよ、なまえ」
「泉田くん!しんが遠回しに落ち着きがないって言ってくる!」
「いや、遠回しというか直接そうおっしゃってますけど…」
「がく!…がいない!くろ!泉田くんがしんの味方する!」
「はあ……俺はなまえさんの味方だからそれでいいっスか?」
「おい黒田コラ調子乗んな」

インハイが終わって数週間。世間はまだまだ夏休みだけどそんなのしったこっちゃないぜって勢いでやって来た夏合宿。何度も言うけど旅館ほんとでかい。なんかわくわくしてきた。合宿って修学旅行みたいだよな。けど小学生だとか落ち着きがないだとか、失敬極まりない。俺だって怒るぞ!
 
それにしても、がくのやつどこ行ったんだ?まさかまた遅刻か?

「先に荷物運んどこ…ごめーん、誰か手伝ってくれる?」
「んなもん後輩にやらせりゃいーじゃん。置いとけよなまえチャン」
「先輩後輩以前に俺マネージャーですから」
「俺手伝いますよ、なまえさん」
「マジ!?ありがとうくろ!じゃあ、」
「黒田ァ、オメーこれ持て」
「えっ」
「やす、お前それ、自分の荷物…」
「なまえチャンが誰か手伝ってっつったんだろォ?手伝ってやんヨ」
「………」

もはやなにも言うまい…ってやつだ。ごめんなくろ、と目で謝っておいた。慣れたようにため息を吐いて素直にやすの荷物を運ぶくろは本当に出来た子だと思う。あの子と泉田くんがいるから箱学は来年も安泰だな。

「…やすってさあ…」
「あ?」
「実はすっごいヤキモチ焼きだよな」
「はあ!?今さら何言ってんのォ?」
「いや、なんとなく」

俺も同類だからそんなに気にならなかったのかな。

「なに?ヤなの?」
「いや、そうじゃなくて」
「嫌だって言われても直せねえけどなァ今さら」
「…別に直さなくていいよ。結構そういうとこ好きだからさ」
「………ほんとさあ、オメーさあ、そういう不意打ちやめてくんナァイ…?」

よし、この四日間も精一杯頑張るぞ!目指せ、脱・子ども!





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