よそでやれ | ナノ


インターハイ一日目:裏話  



(山岳リザルト前のあのシーン)



「3分なんて絵空事だ。追い上げるやつにとって集団は巨大な関所だ!!」
「………」
「荒北さん、でしたっけ」
「んあ?なに?総北一年」
「さっき、まっとうなやつなら…」
「それより巻島ァ、聞いたぞテメー。今でもこっそりなまえチャンと連絡取り合ってるらしいじゃねーかコラァ」
(えっ、無視?)
「はあ?こんな時になんの話っショ」
「惚けてんじゃねーヨ!こっちにゃテメーのストーカーがついてっから何でも知ってんだヨォ!」
「ストーカー!?巻島さんストーカーされてんスか!?」
「チッ、あいつ余計なことばっか嗅ぎ付けやがって…」
「いい度胸してんなァ…俺ァずっとずっと言いたかったんだよ付き合う前からヨォ…テメー東堂ばりになまえチャンに連絡してんじゃねーよこのボケナスがァ!!」
「それは心外っショ!あの馬鹿よりはまだましだっつーの!むしろそっちこそ束縛激しすぎんだよたまになまえから愚痴電来るんだぜ?」
「ハアアア!?ぐっ、愚痴電ってなんだヨそれざっけんなヨ!!自慢かヨ!!」
「俺のこと好きなのはわかるけど最近すぐ怒るんだ〜とかなんとか相談してくるぜ。もう潮時かァ?」
「すぐになんか怒ってねーヨ誰が短気だコラァ!!」
「荒北さーん、説得力ゼロですよー」
「っせー真波ィ!!テメーは黙って引いてろバァカ!!」
「クハッ、自覚あるから怒ってるんショ」
「それに、あいつだって誰にでも尻尾振って回るからわりーんだヨ!」
「男の嫉妬ほど目の当てらんねーもんはねえな」
「テメーちょっとチャリ降りろボケェ!!」
「今降りたら大ケガするっショ!!」
「いやそういう問題じゃねえだろ巻島!!」
「靖友、どうどう」
「っせーよデブ!!」
「…ま、安心しろよ荒北ァ。残念ながら今はあいつも幸せそうだし、無理強いはしねえよ。今はな」
「アア!?今はって、」

「すいません皆さん!!今追いつきました!!」

「なっ、ハア!?」
「ジャスト3分!!よく来た坂道ぃ!!」
「あっ、てめ、待てコラ巻島ァ!!まだ話終わってねーぞ!!追え真波!!」
「えー」
「勝手なことをするな荒北」
「うぐっ、」

「……なんなんスか、巻島さんとあの2番の人、恋のライバル的な…?」
「俺に聞くな鳴子」








(ゴール後黒田視点)



「ハァ!?なんでなまえチャンいないのォ!?」

帰ってきた荒北さんからそれを聞いてすぐに走った。あの人が荒北さんを見失うはずがない。なのに会ってないんだとしたら、何かがあったとしか考えられない。

思いの外すぐに見つかったあの人は、例の一年に絡まれていた。その後の行動は自分でもビビるくらい早かったと思う。

「てめえ、一年だろ。年上相手に何してんだよ」

なまえさんの驚いた顔と、京伏一年のニヤついた顔が目に入る。キッと睨み続けているとどこかへ行ってしまった。

見つけたのが俺でよかったと心底思った。荒北さんが見つけてみろ、もっと酷いことになってただろう。

「ごめんくろ、腕…」

引き剥がすために咄嗟に掴んだ細い腕。離せばこの人は行ってしまう。

…行ってしまう?どういうことだ、まるでそうなることを望んでないみたいな。この人はマネージャーだから。行かせないと。仕事をしてもらわないと。

「もっと警戒心持てっつってんですよ」

なに言ってんだ俺。見ろよなまえさん困ってるじゃん。質悪いタイプの構ってちゃんかよ。ああでも止まらない。元はと言えばあんたがもっと警戒心持ってさっさと逃げてりゃ何事もなかったわけで。なのに大丈夫だろうって油断してされるがまま。そんなんだからあんな一年にすら付け込まれるんだ。

「…俺のことも、警戒しててください。じゃないと、」

せっかく我慢できてたのに、きっとそれ以上を望んじまうから。




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