よそでやれ | ナノ


インターハイ一日目:中  



「あっ、」

嬉しそうに声をあげたなまえさん。ゴール地点の大会本部へ先回りしていた俺たちが見たパソコン画面には、山岳リザルトが発表されていた。

「東堂さんだ!」
「うおおおおおおおお!」
「さっすが山神!」
「あとはゴールだけだな!」

一気に歓声に包まれるテント内。それはなまえさんも同じだった。その時、ふと画面を見直して、また笑いだしたなまえさん。何かあったのだろうか。

「……よかったなあぱち」
「記録よかったんスか?」
「それもだけど、ほら。二位」
「…ああ、総北の…」
「ずっと楽しみにしてたからな、まきとの勝負。楽しかっただろうなあ、こんなに僅差で…」
「…高笑いしてる東堂さんが目に浮かびますね」
「ははっ」

少しだけ笑い合って、すぐにドリンクやタオルの準備を始めたなまえさん。俺もそれに続く。

山岳リザルトが決まったってことは、もうゴールまであっという間だ。全力で走りきったチームを迎え入れるのもマネージャーや俺たち控えにとって大事な仕事。

「ごめんくろ、そこのボトルとって!」
「はい!」

普段の穏やかな笑顔とか、天然丸出しの姿も好きだけど、こうやって役割果たそうとする時に見せる真剣な姿も好きだ。












歓声が遠くから聞こえる。もうすぐ来るんだな、ふく。やすはきっちり仕事したんだろうな。また無茶なコース取りして怪我してなきゃいいんだけど。

(あああああソワソワしてきた!)

ゴール前はいつもそうだ。選手の威圧感とか熱気が全身に伝わってきて、思わず鳥肌が立ってしまう。

「あの、」
「えっ」
「これ、落としましたよ」
「あっ、ご、ごめんなさい!ありがとう」

いきなり肩を叩かれてびっくりした。勢いよく振り返ると、黒髪をくくった男がタオルを持っていて、すぐ我に帰る。間違いなく俺が抱えていたやつだ。もう一度謝罪をしてそのタオルを受け取った。

あれ?この子どこかで見たような。

「見えたぞ先頭!」
「お!」
「一、二……三人だ!三人並んでる!」

観客の声が一頻り大きくなってきた。三人も並んでるなんてすごいな。ふくと、金城くんと、あ、

「みど……なんだっけ!」
「御堂筋ですよ」
「そうそれ!すごいなあの子先頭だぞ!」
「関係ないっスよ…あと少しです金城さん!!」
「いっけえええええふくー!!」

黒髪の子とほとんど同時に叫んだ。











「お疲れ!ふく!」
「みょうじ、」
「最前列で見てたぞ!かっこよかった!テントすぐそこだから休んどけよ!」
「ああ」

流れるようにドリンクとタオルを渡して、あとは他のマネージャーに任せておいた。これからどんどん選手が帰ってくる。人波に巻き込まれないようにみんなを探さなきゃ。




「見ィつけたァ」

ん?



160105

[ ]