よそでやれ | ナノ


言いたいこと  



荒北となまえは無事付き合うことが出来たらしい。帰ってきてからの二人の様子からすぐに察することが出来たし、まあいろいろあったが結局こいつら二人はお互いじゃないとダメだっていうのは分かりきってたことだ。本当にいろいろあったがな。遠かれ近かれ、この二人が結ばれるのは決まっていたのだろう。何せ鈍感二人だ。いつの間にか友情が愛情に刷り変わっていたのに、喧嘩や嫉妬をすることでやっと気付いたくらいだ。周りをこれだけ巻き込んでまで遠回りしてやっと手に入れた幸せ、簡単には手放さないだろう。それは外野である俺たちよりも本人たちの方がよくわかっているはず。

だが、俺はお前らに一つだけ言いたいことがある。



「お疲れ様、やす。ドリンク」
「んあ、アリガトネェなまえチャン」
「この調子だと、インハイメンバーも固いんじゃないかな」
「ハッ、当たり前じゃナァイ?最後のインハイだ、死んでも出てやるってのォ」
「気持ちはわかるがほどほどにな。最近また馬鹿みたいに練習量が増えてるぞ」
「なぁに?心配してくれてんの?」
「当たり前だろ」
「なまえチャンは優しいネ。愛してるヨ」
「お前にはいつも優しいと思うんだけど」
「当たり前、俺以外にもそんなに優しくされたら困るしィ。ていうか愛してるはスルー?」
「ああ、俺も愛してるよ。それと明日のメニューなんだけど」
「えっ、待てよ何それ軽くナァイ!?もっと心込めて言ってヨ!」
「は?メニュー?」
「ちっげえよバァカ!もうなんでそんな…鈍チンなワケェ…んなとこも好きなんだけどォ…」
「?ありがとう?」

聞くところによると、もう誤解や勘違いなどが生じないよう、今までよりも素直に言葉を交わすようにしようという約束をしたらしい。いい案だと思う。フクも常々あいつらは言葉が足りなさすぎると言っていたしな。

「だがなお前ら、そろそろいい加減にしろ!今は部活中だぞ!イチャつくならよそでやれ!」
「い、イチャ…!?」
「変な言いがかりはやめろよなァ東堂、なまえチャン照れてるだろうが」
「百歩譲ってなまえはまだ良しとしよう。無自覚だしな。だがしかし荒北お前は違う!わざわざそんな見せびらかすような真似をするな恥ずかしい!」
「見せびらかしてねーヨ。付き合う前からこんな感じだっただろ俺ら」
「付き合う前は愛してるだの好きだの言ってなかっただろう!」
「気のせいだヨ」
「気のせいではなーーーい!!」

ずっと言いたかったのだ、お前らが付き合ってから一週間。お前らが構わないのなら学校ででも外ででも部屋ででも存分に愛を確かめ合えばいい。しかし、せめて、部活中は控えろ!見ろあの後輩の目のやり場に困ってる様子を!後輩だけじゃないぞ同期の俺たちだって困ってるんだ数少ない有能マネージャーであるなまえを独り占めされてるからな!

「なまえ、お前もお前だ!お前がしっかり荒北を管理しなければ付け上がるだけだぞ!」
「俺のせいなのか!?」
「部活中くらい距離を置け!支障が出る!お前が言えば荒北だって…」
「そ、それもそうか……やす、部活中はあまり無理に接触するのは控えよう」
「ええー?ヤダ。寂しい。練習出来ない。辛い」
「子どもか!ちっとも可愛くないぞ!」
「その分練習が終わったらいっぱい構ってやるから。な?」
「…んー。約束ダヨォ…?」
「そこ!ナチュラルに頭を撫でるななまえ!ナチュラルに顔を寄せていくな荒北!近いんだよ俺はそういうところを注意してるんだ!!」

ダメだ。俺のツッコミだけでは追い付かない。しかしこのまま捨て置けば部の風紀が乱れかねん。せめてなまえがもう少ししっかりしてくれればと思ったがこのド天然にそれを期待する方が間違っていたか。荒北は言わずもがなベタ惚れ状態だし確信犯だし甘やかしまくるし…甘やかしまくるのはなまえも同じだが。

想いが通じ合えば何かが変わるとは思っていたが、このような変化は求めていない!

「そうだやす、タオル渡すの忘れてた」
「あー、なまえチャン拭いてくれるゥ?」
「それくらい自分でやれよ…」
「なんだかんだ拭いてくれるなまえチャンマジ天使ィ」

言ってるそばからまたイチャつきだすな!






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