よそでやれ | ナノ


やすの様子がおかしい  



※初期北
※お下品






「…ん、ん、」

なんだ?

「んぅ、はあ…っ」

なんかうるさい。

「ネェ、はっ…まだ、起きないのォ…?」

熱い。うるさい。ぬるぬるする。ぞわぞわする。気持ち悪い。でもこの声は、

「はあ…ん…なまえチャァン、」

あ、やっぱり。

「…や、す……?」
「!」

うっすら目を開けると、すぐ目の前にやす……やす?

「……えっ、わ、違う!誰だ!」
「イテ」

似てるけど違う。そう思った瞬間一気に目が覚めた。力一杯押し返し、た、つもりなのに、動かない。やばいやばいやばいやばいやばいやばいピンチピンチピンチ

「や、やす!助けて!襲われる!こわい!」
「何言ってんのォ?やすはオレだケド」
「嘘だ!やすはそんなに髪長くないしそんなやらしい笑い方しないしまずこんな時間に部屋来ない!!」
「嘘じゃねえヨォ?」
「ぎゃあっ!」

隣の壁をガンガン叩いて助けを求めたけど効果なし。いつもなら呼ばなくても来るくせにおかしい。夜だからか?

状況が状況だけに完全にテンパっていると、嘲笑うかのように耳を噛まれた。

俺のこと知ってるしこんなことしてくるし、嘘じゃないって言うその声も話し方もたしかにやすと同じだし、服もやすのものだし、顔もよく見れば似てなくもないけど、如何せん雰囲気が違いすぎて…

「っ、ま、待って、あの、本当にやす、なのか?」
「ウン。そーだヨ。なまえチャンのダァイスキな荒北靖友だよ」
「……信じていいの?」
「…なんなら証拠見せたげよっかァ?」
「証拠?」
「オレのカラダ…見慣れてるデショ?」
「!!」

そ、そのネタは……やっぱりやすなのか、これ。それにしたって雰囲気が、なんか、妖しいというかエロいというか普段のやすとは真逆だ。ペロリと舌舐めずりをする顔も、服を捲り上げて腹を見せる姿も、照れ屋なやすなら恥ずかしがってしないだろう。

「…じゃあ、信じる」
「アハッ、なまえチャンはやっぱり優しいネ」
「お前がやすだって言うなら俺は全部信じるよ」
「…なまえチャンはさァ、ほんっとにオレのこと好きだよネェ」
「お前が一番よく知ってることだろ?」
「言うねェ」

これはやすだ。そう思うとだいぶ気が楽になってきた。ちょっといつもより甘えたちゃんになったんだろうなと思っておこう。可愛いもんだ。

「それで、こんな時間に甘えに来た理由は?太陽昇るまでまだ時間あるぞ」
「甘えにネ…それはチョット違うヨなまえチャン」
「………と言うと?」
「甘えにじゃなくてェ、食べに来たの」

ニッコリ。語尾にハートマークをつけてそう言ったやすは、そのまま俺の唇に噛みついた。痛みと驚きで、つい思いっきり突き飛ばしてしまった。さっきとは違い少し距離ができたので安堵する。しかし危険な状況に変わりはない。

「おま、き、急になにするんだ!」
「なにって、決まってるでしょォ?」
「決まってない!俺を食べたらお腹壊すからやめなさい!」
「ナニソレ。分かってるくせにサァ…見てヨなまえチャン、コレ」
「なに……うわ、」
「さっきまでスヤスヤ眠ってたなまえチャンのニオイ嗅いだり、カラダ触ったり舐めたりしてたらネ、こんなんなっちゃって…」
「ひっ」

責任とってヨ、と俺の手を掴んで、そのまま自分のソコへ持っていった。うわ思いっきり勃ってる。ていうかこれ俺のせいじゃないのに。責任とる意味がわからん。

「は、ァ、なまえチャンに、触られたら、もっと、はっ、固くなっちゃったァ…」
「いやいやいやいやいや自分でやったよなそれ!やめてくれるかな俺のせいみたいに言うの!」
「なまえチャンのせいでしょォ?オレのこと、こんなんにさせんの、なまえチャンだけだヨォ」
「嬉しいけど今はありがた迷惑!」
「…オレに抱かれんのイヤなの…?」
「そう、じゃ、なくて…その…」

今日だけじゃない。何度も何度もやすに求められるけど、毎回それとなく回避してしまう。嫌なわけがないし、やすじゃないと嫌だ。でも、

「……ごめん。まだ、怖くて…でもいつか必ず」
「待てない」
「っ、」
「はあ…よく我慢できるヨネェ。あっちのオレの神経疑っちゃうヨ」
「…あっち?」
「ウウン、なんでもない。でもオレはそんな待てないの。ゴメンネなまえチャン」
「や、待ってくれやす、俺は…っ!」

いつもならすごく残念そうな顔してやめてくれるのに。俺の言葉なんか聞かないみたいに無理やりキスされた。

でも、やすを怖いって、理不尽だって思うのは間違いだ。だって俺の勝手な理由で今まで我慢させてきたんだから。怒られたり喧嘩にならなかったのが不思議なくらいで、やすは待とうとしてくれてた。だからそれに甘えてたんだ。全部俺がわるい。だから、もう本当の本当に我慢できなくなったのなら、俺はもう


あ、でもダメだ。やっぱり涙が、

「……ア、」














「…………あれ?」

最後に一言やすが呟いたと思ったら、朝になってた。慌てて体を起こすと、隣にはすやすや眠るやす。髪の長さが元に戻っていた。じゃああれは夢だったのか?もしかしたら、やすの不満が夢になって俺に訴えかけてきたのか?

「…やす」
「…んん……あー…は?なまえちゃ……なぁんで…俺の部屋いんのォ…?」
「ここは俺の部屋だよ」
「へ……え?な、え?なに?泣いてる?」
「…やすぅ、ごめんんん…!」
「なに!?どしたのなまえチャン、俺もしかして寝惚けて夜這いしてたァ!?」
「ごめんなやすううう…」
「なんでなまえチャンが謝んだヨォオォ!」

泣いてる俺を見て飛び起きたやすは、ひたすら抱きしめながら背中をさすってくれる。よかった、いつもの優しいやすに戻ってる。そう安心すると余計涙が出てきた。

待たせ過ぎてごめんなやす。本当にごめん。俺もちゃんと覚悟決めるからさ、だから愛想尽かさないでくれよ、やす。

朝食の誘いのため俺の部屋に来たぱちがこの光景を見てやすを怒鳴り付けるまで、あと五分。





151230

[ ]