よそでやれ | ナノ


可愛いだけじゃない  



(アンケネタ)



「あ、みょうじさーん!」
「おう、がく…」
「どーん!」
「どあっ!!」

ロッカールームに入ると突然大声で呼ばれた。あ、がくだ、と思ったらそのまま激突される。た、体当たりか、突進か、どっちだ。どっちにしろ大ダメージだけど。ビックリしたし。アタックされた衝撃でそのまま二人揃ってその場に倒れてしまった。

「な、なんだなんだ、急にどうした!?」
「えっへへへ」
「えへへって…何か良いことでもあったのか?」
「はい!ありました、今」
「いま?」
「みょうじさんのこと見つけました」
「…それが良いこと?」
「良いことですよー」

にこにこ嬉しそうに笑ってそう言ったがく。か、可愛い〜俺の後輩すっごい可愛い〜!やっぱり後輩っていいな!素晴らしい!たっとちゃんもがくと同じジャンルで素直で可愛いしいちも真面目だけど素直で可愛いしくろもたまに意地悪だけどなんだかんだで可愛いし銅橋くんもぶっきらぼうだけどいい子で可愛いしほんとみんな素晴らしいな!自転車部の子たちみんないい子!素晴らしい!

そんな可愛い後輩たちの中でも群を抜いて可愛いのがこうやって素直に甘えてくるがくやたっとちゃん。またえへへと笑いながら俺の腰に抱きついてきたがくの頭をわしゃわしゃと撫でた。高校に入るまで後輩とか先輩とかがいた経験がなくて、しかもこうして甘えられることもなかったから、嬉しくてついつい甘やかしてしまうのだ。

「お前はほんっとうに可愛いなあ…あー、でも、そろそろ起きなきゃ」
「えー、なんでですかあ?」
「もうすぐみんな来ちゃうからなあ。これ見たらビックリされちゃうし」
「大丈夫ですよー、一緒に昼寝してたって言って誤魔化せばいいんです」
「昼寝って…もう放課後だぞがく」
「んー、でも、俺」
「うん?」
「もうちょっとみょうじさんに甘えたいなあ」

ダメ?と寂しげな顔をして見上げてきたがく。

(こ、これが小悪魔…!)

男の俺でさえこんなに動揺してしまうんだ。女の子がこれされたら卒倒しちゃうんじゃないだろうか。ただでさえ可愛い顔してるのにそんな甘え方されたらついうっかり許容してしまいそうになる。我が後輩ながら末恐ろしいな。だがしかし、俺は、惑わされないぞ!あんまりベタベタしてたらまたやすが怒るからな!もうさすがに俺も学んだからな!

「…悪いながく、ダメだ。今日はもうおしまい!練習頑張れよ!」
「やだなーこのままじゃ俺練習頑張れないなー」
「だーめーだーもう十分よしよししてやっただろー」
「足ーりーなーいーでーすー」
「ワガママ言わない!さあどいたどいた!」
「今日のみょうじさんケチだあ」
「ケチで結構ですーとりあえず早く降りなさい」
「ふああ…なーんか眠たくなってきたなあ」
「なんでそうなる!?」
「おやすみなさー」
「ちわー…す……」
「「あ」」

ガラリと開けられたドア。そこに立っていたくろは、俺たちを見て一瞬で顔面蒼白になってしまった。

「ちっ、違うんだくろ聞いてくれ!これは」
「真波てめえ何やってんだ今すぐそこから降りろ馬鹿野郎!!」
「あはは、黒田さんちわーす」
「ちわーすじゃねーよ張っ倒すぞお前!!」
「なんでもいいからとりあえず降りろがく!!」
「ちぇー」

なんとかくろのおかげでやすに見つかる前に剥がしてもらえたけど、今後はちょっと後輩甘やかすのほどほどにしておくべきかもしれないなと冷や汗をかいた。特にがく!要注意!









ネタ元:「とことん甘えられたい」というコメントから
ありがとうございました☆



160616

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