※グルメ界編入ってます
※バンビーナ戦後



「えっ」

残りのアカシアのフルコースを集めるためのメンバーが組まれた。トリコさんとスタージュンさん。ココさんとタイランさん。サニーさんとライブベアラーさん。そして、

「…なんやねんその顔」
「……いえ、別に」

ブランチさんとゼブラさん。

またかよ、と心のどこかで思ってしまったからさっきの声が漏れてしまったんだと思う。前のグルメフェスだってそうだった。島まるごとクッキングでもタッグ組んで、二人ともケンカばっかりだったけど何だかんだでいい感じにクリアできてたし、キャラが似通ってるとこあるし、何だかんだでいいコンビっぽいし、美食家の不良がゼブラなら料理人の不良はブランチとかってセットにされてるし……

「別にって顔してへんやんけ……おい、聞いてんか」

ていうかゼブラさんだけじゃない。フェスの時から気になってたんだ。明らかに小松シェフのこと気に入ってるよなこの人。あ?人?天狗?もうどっちでもいいんだけどとりあえずお気に入りだよな小松シェフ。

「おーい、もしもし〜、なまえくーん?」

さっき再会した時もすっごい喜んでたし。いや、そりゃ俺だって喜んだけどそれとこれとは話が違うというか。あんな嬉しそうなブランチさんは珍しいというか。ああそんなに気に入ってるんだなあ小松シェフが、と思っただけだけど。たしかに小松シェフって人を引き寄せるなにかを持ってるもんな。俺やブランチさんにはない癒し要素満載だし。一緒にいるだけでなんかホワーンてなるもんな。わかるわかる。

「…なあって。いい加減話聞いてくれへん?」

あー。せめて俺がもっともっと強かったらなあ。それこそゼブラさんと同じくらいかそれ以上に。そしたらブランチさんと一緒に行けたかもしれないのに。まあただの理想でしかないから現実こうなってるわけなんだけど。普通に考えて嫌だな。これからしばらく会えないどころか、他人と二人きりって。ゼブラさんだから浮気なんてまあ天地がひっくり返っても起きることではないとは思うけどそれ以前に俺の気持ちの問題だよな。

「………なまえ」

てか、ここにきて、なんだよこれ。地球が大変だって時になに一丁前に嫉妬なんかしてんだよ俺。しかもそんなちっせえ理由で……いや待てよ、そういう風に考えるから駄目なんじゃないか。もっと気楽に考えればいい。いや事態は一刻を争うからそんな気楽にとも言ってられないんだけど。けど、そうだよ、今からこの人たちは世界を救うために動くんだ。他意はない。なのに参加も出来ない俺がこんなぐだぐだ考えてても一緒だろ。ここは皆さんの安全を、無事を祈って、笑顔で送り出さなきゃいけない場面だ。しっかりしろ俺。

「なまえ……おい、ワレいい加減に」
「ブランチさん」
「あっ、お、おう、なんや」
「浮気したら殺す」
「はあ!?」
「間違えました。死なないように頑張ってください」
「どんな間違いやねん!!しかもなにその応援!言葉のチョイス間違ってるからな自分!」

しまった俺としたことが。つい本音が。

「けどまあ俺以外のやつと二人っきりで遠出するって時点で立派な浮気ですよね」
「待て待て待て話がおかしい。さっきの話聞いとったか?ワシが決めたわけちゃうやん。ちゅーかお前それヤキ」
「だからやっぱり殺しますもしくは半殺し」
「どっちも怖いわ!!」
「だから」
「!」
「…だから、俺がとどめさすんですから、ちゃんと生きて帰ってきてください」

あ、やべ、泣くのだけはやめとこうと思ってたのに。慌てて下向いたけど、遅かったみたいだ。

「…帰ったらしばかれるけど、帰らんかったらもっとひどいことなりそうやからちゃんと帰るわ」
「……当たり前です」
「余計な心配せんでええから、ええ子にして待っとけアホ」

強引に後頭部を掴まれて、そのまま胸板に押し付けられた。しばらくこの温もりや匂いともさよならだから、今のうちにしっかり堪能しておこう。

そうだ、俺は寂しいんだ。嫉妬なんかしてないぞ断じて。寂しいだけだからな。だから早く済ませてちゃっちゃと帰ってきてくださいよ、ブランチさん。 



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