Distortion BlooM

19 色褪せた未来の回顧録 1/5 


 昔の話をしましょうか。

 実はほんのつい最近の出来事だったりするけれど、あたかも昔話かのように。
 今は昔、なんて古文のような冒頭で始めてみたりして。

 今は昔。世界は色で溢れていて、
 今は昔。私はちゃんとそこに生きていて、
 今は昔。誰かが私の名を呼んでいた。

 今となっては昔のことだが、私にも知り合いがいた。友人と呼ぶには互いを知りすぎていて、親友と呼ぶには互いに踏み込まなかった。そんな人が。

 振り返って見えたのは、懐かしい景色。
 引き返して感じたのは、色褪せた回顧。

 それはただ傷を舐め合う、平々凡々な日々。
 触れた彼女の汗ばんだ肌が傷口に沁みて、私は遠いあの日を思い出す。

 昔の話をしましょうか。
 それは私が空を飛びたいと願った、ある晴れた冬の日の出来事。


色褪せた未来の回顧

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