18 指先はただ傷跡を辿る 1/5 真っ直ぐに前を向いて歩いている人間が、この世にどれだけいるというのだろう。そんな事を思案する私は多少口が悪いから、そうやって呟くのは一言に尽きる。そんな事が出来るのは、何も考えていない馬鹿くらいなんじゃないかしら? なんて。 生まれたばかりの赤子を越えて、自分の足で立ち上がった子供はいつの間にか過去を見つめて歩く事を覚える。積み重ね、知った、過去の記憶を頼りに歩く事に決める。 否、覚えるも決めるも語弊があるだろう。見つめざるを得なかった、それだけだ。 一般論のように未来を光だと喩えるのなら、見つめる先は暗い闇の底なのだろうか。過去という物質が重く沈殿して見える、手探りの闇。 けれど未来を何も分からぬ闇だと喩えるのなら、見つめる先は全て明るみに輝く光の先なのだろう。楽しくなくても辛くなくても悲しくなくても、確かに“何か”がそこにあったと。そんな事を証明する光だ。 ただ一つ言える事は、誰もが後ろを見つめて歩いている事。道標となる過去を見つめて、歩き続けているという事。 自分が辿った罪の光を忘れずに、残った足跡を数えて。 ……え? 結局それって私の事なんだろうって? 一概にそれを否定するつもりはないけれど、そこまで分かりきった話でもないんじゃないかなー。ほら、言ってるじゃん、“誰もが”って。 なーんてね。 指先はただ傷跡を辿る ←/→ |