そして彼女と恋をする










稀に、瀕死の人間に吸血鬼の血を与えると生き返ることがあるらしい。
しかし、その人間はその瞬間から人間ではなくなってしまうのだが。
吸血鬼の血を飲むと吸血鬼に変わってしまうからだ。
命が救われる変わりに、その人間は永遠の命を手に入れることができる。
吸血鬼になり、永遠に生きていくことになる。
血を分けた吸血鬼と共に。
共存しなければいけなくなる。




俺はその嘘か本当かも定かではない僅かな可能性に、自分の命を賭けた。











――――――――――――






「これが、吸血鬼…?」

明らかに変わった俺の身体。
人間ではなくなったその感覚に、俺は戸惑う。
視覚から聴覚から触覚から嗅覚から鼓動から何から何まで人間とは全く違う。
人間のそれよりもかなり敏感になった。
これが吸血鬼が感じる世界。
彼女と同じ世界。
同じ存在。

「うわぁ…!」

嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい!

夢にまで見た、彼女と同じ世界。
彼女と共存する世界。
彼女の運命共同体。

「全く、呆れた…。
さっきまで死にかけていた癖に。」

「だって、こんなに嬉しいことってないよ!
君と同じ世界で生きることを、俺はずっと望んでいたんだから!」

「…………。」

俺のその言葉に彼女は深刻そうな表情をした後、言いずらそうに口を開く。

「……良いんですか?貴方はもう人間ではない。貴方が愛している人間にはもう戻れない。

貴方は、人外になってしまったんですよ?」

「構わないよ。君と共に生きられるのなら。」

「でも、僕と出逢ったばっかりに、貴方の人生は…っ、」

続く筈の彼女の言葉すらも飲み込むように、俺は彼女に深く口付ける。

「…っ、何を、」

「一々照れないでよ。さっきもっとディープなのしたじゃない。」

「あ、アレは、儀式で…!」

「可愛いなー、ミカド君は!
やっぱり、俺が愛しているだけはある!君は最高だ!」

はぁ、と溜め息を吐く彼女に苦笑して、俺は更に続ける。

「これは嘘なんかじゃないよ。
俺はあの日君と出逢って、君を好きになれたことを後悔なんかしていない。
寧ろ、幸運だったと思っている。
それは、君が人外だからとか吸血鬼だからとかそんな理由じゃない。
君という存在に出逢えて、本気で好きになれたことに対して、俺は本当に幸せだと感じているんだ。」

「……臨也、さん」

「初めて俺の名前、ちゃんと呼んでくれたね。」

拙そうに俺の名前を紡いだ彼女に愛しさが溢れる。

細くなってしまった体躯をそっと抱き締めて、彼女の温もりを確かめる。

そうしているとお互いの身体が温まっていくのを感じる。
正確には、彼女の身体が熱を取り戻しているのだが。
少しばかり、俺のエネルギーを彼女に分け与えたからだ。

彼女は1つ瞬きをした後、もう十分だというように俺の身体を引き離す。

「これから、戦争が待ってるんですから。
そんなに消費したら勿体無いでしょう?
それに、吸血鬼になりたての貴方にはいろいろと教えることがいっぱいあるのですから。
その力の使い方やらコントロールやら。」

「それは、そのときになったら聞くよ。
それより、今はこの喜びを噛み締めたい。」

「何気持ち悪いこと言ってるんですか?やめてくださいよ、変な言動は。
吸血鬼は高貴な存在なんですから。」

「相変わらずの毒舌だよね。」

「当たり前ですよ。
吸血鬼になったとはいえ、貴方はまだただの下っ端なんですから。300年も生きている僕にとっては赤子みたいなものです。」

「わかったよ、お母さん。」

「誰がお母さんですか…。」

そんなくだらないやり取りでさえ、人間と吸血鬼という大きな壁がなくなった今となっては、とても楽しい。
いろいろな意味でとても気が楽になった。

これで彼女と俺は離れることはなくなった。
彼女にとっても俺にとっても、お互いがお互いに必要な存在で、運命共同体。
どちらかが死んだら、もう一方も死ぬ。
彼女と共に生き、彼女と共に死ねる。
何て、幸せなのだろう。

想い焦がれた理想が此処にある。

この先、例え戦争が起きようとも俺は彼女がいる限り怖くなんかない。

彼女を愛している。

彼女と共に生きていく。

これから彼女との物語が始まっていく。

それは、きっとちょっと歪な恋の物語。

いつか、きっと彼女が、
本気で俺を愛してくれるまで―――――













end

長くなってしまい申し訳ありません!いろいろ語りたいことはありますが言い訳はしません!
とりあえず譲葉様、このような駄作に仕上がってしまい、素敵ネタを潰してしまったことを謝ります!ごめんなさい!

リクエスト本当にありがとうございました!

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