恋の始まりはいつだっけ? | ナノ
好きになっていくのがわかる

「なまえ、足の方はどうだ」

とんとんと肩をつつかれて、キャパを起こして壊れた足の心配をしてくれた。
君を思って壊れたならいいんだ、なんて言いたくなったけど、好きなんてバレたら困る、恥ずかしい。
大丈夫だよ、すぐ治るとだけ返して、彼の服の袖を軽く握った。

「……二位おめでとう、轟くん流石だね、すごいよ。私の永遠の憧れ」
「そうかよ……一位は取れなかったけど、まあそれはいいんだ、今は、」

お前の足が心配なんだ、と私の感覚が麻痺している足をそっと撫でた。
ないはずの感覚が戻ってきたように、ふるっと身体が震える。
自分のことよりも、今は私のこと。
そう言って心配してくれた彼は、例え一位を取れなくても、私の大好きで仕方ない彼のままだった。
父親のことで葛藤しても、やっぱり彼は彼なのだ。

「轟くんのそういう優しい所、好きだよ」
「そう思ってもらえてるならありがてぇな」

はっとつい言ってしまった口を抑える。
しかしそれすら杞憂だった様。彼は私の本心なんて気づいてはいなかった。
目を細めて優しく笑う彼から目を背けて、赤く腫れた足首をぐっと掴む。
そんなに掴むんじゃねえよ、なんて言いながら私の手を柔く引き剥がしていく。
優しすぎるよ、なんでよ、これ以上好きにさせないで。
好きになっていくのがわかる、それが唯、苦しかった。

「轟くん! ちょっとちょっと、」
「……ああ、今行く」

またな、と手を振りながら、前に一緒に昼食を取っていた普通科の美人さんの所へ行ってしまった。

――あぁ、これは待っていられない。

私だって勝負に出なきゃいけない。
美人さんに取られてたまるか、私の二年間の片想いを潰してたまるか。
強く拳を握った。
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