居場所のその後(1/1)


坊っちゃんと話した後、私は燕尾服の男に部屋に案内された。


「申し遅れました。私はセバスチャン・ミカエリスと申します」

「セバスチャン…ね。あなた、人間?」


さっきから気になっていた。セバスチャンからは人のニオイがしない。
私が聞くと、セバスチャンは面白そうに笑みを深めた。


「いいえ。私は悪魔で執事ですよ」


やっぱりね。
正体がなんなのかわからなくて警戒していたが、それを緩める。
…だって疲れるし。


ポンッ!


「「…」」


間抜けな音と共に、私は人間に戻っていた。
素っ裸だが…。


「やっ」


小さく悲鳴を上げて身体を隠すように抱え込むと、パサリと身体にシーツが掛けられた。


「日本人でしたか」


セバスチャンが私の長い黒髪に指をスッと通しながら囁く。
な、なんて心臓に悪い…。タラシか!


「あ、ありがとう…」

「いえ。着替えはクローゼットの中にありますから」


若干赤くなりながらどもった私を見て、セバスチャンはクスリと笑う。


「それでは、明日からきっちり働いてもらいますからね。覚悟しておいてください」


その後小さく、彼らより使えるといいんですがと言っているのが聞こえた。
聴力も良くなっているらしい。
なんだかなー。
シーツをキュッと握る。


「おやすみなさい、名前」

「!!」


や、やられたっ!
去り際に髪を一束すくってキスするとか、キザすぎでしょう!
絶対確信犯だし…。




セバスチャンは絶対腹黒いと思った初日の夜