赤
傷口から滲み出るそれが
こんな色でなければ
良かったのにと
似た色をした唇から
君は呟いていた
力無く微笑んだ
その瞳の奥には
一体何が映っているの?
何だって想像できるから
とてつもなく恐ろしい
僕は背中がぞくりとして
そっと俯くと
何故か君は喉の奥でくつくつと笑った
大丈夫よ、なんて
何の助けにもならない言葉を
おまけみたいに付け足して
か細い左手首の三日月に
右の掌を押し当てると
泣かないでね、とまた付け足しては
僕の顔を覗き込むように見て
その場から去っていく
僕はその背を見送りながら
君の最後の言葉を裏切った
さ よ な ら ― 。
小さくなって消えていく
君の靴の音が
そんな風に聞こえたから