Dislike



何でもっと早く気付かなかった?


ここが本当に本当に厳しい世界なんだってことに。





僕は馬鹿だ。





…そうか。








馬鹿だから気付けなかったんだ。


ただそれだけのこと。





その世界とは全く違う、ちっぽけなガランドウの世界にふらりと立ち尽くした。


僕の唇からはひとつ、大きな溜め息がこぼれる。


そして、誰もいないその窮屈な世界で、へらりと笑う。


声まで上げて笑い出したかと思えば、今度は大粒の雫が頬をすべり落ちていく。





きっと疲れたんだね。


色んなことに。





視界がゆらゆらと揺れている。


足元がぐらついて、バランスが取れなくなった。


僕はそのまま床に座り込んだ。





雫はまるで、滑り台で遊んでいるかのようだ。


僕はこんなにも悲しいのに。





悲しい?


そうか、僕は悲しくて泣いているのか。


意識が朦朧としていくのにも関わらず、自身の脳と対話した。








誰かに勝ちたいとか。


誰かよりもうまく生きたいとか。





そんなことを考えたことはなかった。





ただ、自分の手で生み出したものを誰かに見て欲しくて。


作り上げたものを感じ取って欲しくて。





自分のことは好きじゃないくせに。


願ってることは、夢に見てることは。





全部全部自分のためなんだ。





友達のために、


恋人のために、


恩師のために、


家族のために、





自分がそうやって生きるんだって決めたら、それはもう既に。





自分のしたいことだよね?


自分のためなんだよね?








ほら。


僕はきっとまだ。





僕のことを好きでいるんだ。











鼻の奥がツンとしたのが気になって、深く呼吸をする。


目を開けたら、ゆらゆらしていた視界がぼんやりとし始めていた。


疲れきった腕をなんとか動かして、皺だらけの袖で目元を拭く。






少なからずついてきた嘘の中。


今になって見つけたんだ。






僕は自分が嫌いなんです、と。








そんな僕が誰かのために何が出来るって言うの?


きっと、ただ僕は自分のために生きているだけなんだ。








悲しみ、という名の深い深い湖が心の中を埋め尽くしていて。


それを他人のようなフリをして眺めている。











僕は自分が嫌いなんです。








でも本当は…














好きでいたいんです。














淡い青色の中に、小石を投げた音が聞こえた気がした。








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