ＢＡＢＹ(4/14)「今日から名無しは俺の家から一歩も出るな。いいな、分かったか？そんな顔すんなよ、名無し。俺はお前を一マイクロ秒も欠かさずに守ることは出来ねぇ。仕事があるし、よ？それに見ろよ…今日も雨スゲーだろ？だから、名無しは家から出ない方が良い。此処なら安全だからな」 あたしは昨日、しずくん家に初めてやって来た。しずくんと付き合って昨日で丁度、三週間。キスもしたし、手も繋いだ。デートは二回した。水族館に行ったのと映画観たので二回。しずくんは優しくていつも正しい。四ヶ月前、ド田舎から池袋に引っ越して来たばかりのあたしが折原に騙されてたところ(やぁ！初めましてと言われた時)を、しずくんが助けてくれた(ブロック塀が紙吹雪みたいにどーん)のがきっかけであたしはしずくんが大好きになった。しずくんは凄い力持ちパワーの他にエスパーも使えるらしく、出逢った時に既にあたしを知ってて…その三ヶ月と一週間後にはめでたくカップルになったのです。つまりはずっとしずくんはあたしの神様。ヒーロー。大好きな人。 そして今朝、しずくんが「名無し、名無し」って呼ぶ声に飛び起きたら…あたしは何だか手にしずくん好みの可愛い皮のアクセサリー(長いチェーンが付いてて根本はベッドにくっ付いてた)を付けられた状態だった。昨日初めて大人の階段を登ったからしずくんの顔が恥ずかしさで見れなくてもじもじしたけど…しずくんはあたしの頭をよしよしって撫でてくれて、それからそう言った。あたしは家から出ちゃいけないのか。守ってくれる、心配してくれる…やっぱりしずくんは優しいな、それにいつも正しい。だからあたしは頷いた。確かに外は雨が凄い降ってて、ベランダは大洪水だった。 しずくんがお仕事に出かけてから、あたしはベランダへの窓をガラガラと開けてみた。雨のせいなのか朝早いからなのか、其処から見える風景はどんよりと暗くて…まだ街灯がぽつぽつと点いていた。誰も通らない。当たり前か、寝てる時間だもんね。音に気がついて見たのに、新聞配達のバイクもすぐに何処かへ消えてしまった。ゆっくりと振り返って、部屋を見渡す。小さなテーブルに乗せられている、皿に盛られてラップされた炒飯はしずくんがお腹空いた時にって、あたしの為に作ってくれたもの。あたしの昨日着てきた服(今はしずＴとパンツだけです)がリビングと寝室の間で揺れている。 でもどうしよう…しずくんと暮らすってことは、しずくんの家から出ちゃいけないってことは、自由気ままな池袋生活はもう出来ないってこと。だって、ド田舎から池袋来て…不安もあったけど楽しかった。ワクワクした。しずくんはいつも正しいけど、でも何か、…。やっぱりあたしは難しいこと分からないな。 窓を閉めてベッドにそろそろと戻る。昨日の夜、あたしが眠ってしまう最後の時にちょっと苦しそうにひきつった顔(今までで一番セクシーで素敵だったな)でしずくんは言っていた。 “今日で三週間…か。起きたらまた新しい日々だ、名無し。つーか明日、雨だっけか。だったら冷えるからちゃんと布団掛けとけよ？…名無し、愛してる。周りが何と言おうと、俺はお前を守ってやるからな。って…もう寝てんのかよ” きちんと最後まで、聞いてたよ。ごめんね…返事できなくて。後で帰って来たら言わないと。 † しずくんの家に住むようになってから三日。昨日あたしはしずくんがお仕事行ってる間に自分の鞄を探した。あたしの鞄は押し入れの中にあって、携帯もあったから退屈しのぎをしようとあのチャットを開いた。いつものメンバーと会話を楽しんでいたけれど、お仕事から帰って来たしずくんは携帯をいじくるあたしに怒って携帯を壊してしまった。しずくんは「誰かが此処にいるってバラしたらどうすんだ」とカンカンで、あたしはちょっと怖くなったけど…ちゃんと内緒モードでセルティにしずくんと同棲始めたんだって伝えただけだから大丈夫なのに。でも、セルティももしかしたら岸谷医師とかにバラしちゃうかも知れないよね？しずくんはいつも正しいもんね。ごめんなさい。でも、あたしもお友達とお話ししたいんだよ？しずくん、それも駄目なの？答えて、… でもあたしはやっぱりしずくんの言うことを聞くことにした。唯一気がかりなのは大好きだった少年マンガが読めないことぐらい、そんなあたしだからね。んー、どうしよう。気になるは気になるからしずくんにお願いしようかなぁ？因みにあたしの贔屓は小学館。スピリッツ読みたいなぁ。あっ、あたし馬鹿だけど、ＭＯＮＳＴＥＲ最終巻の謎解きは任せて欲しいな。 「今日で三日、か。」 今日から三週間 目覚めちゃダメだよBABY 外は大洪水 起きるとあぶないBABY 今日から三週間 目覚めちゃダメだよBABY 外は大混乱 寝てなきゃいけないBABY ／ 相対性理論の 小学館 監禁ソングにしか聞こえないのは私だけですかね。 戻る |