天使になってあげる

(3/14)






私の名前はセルティ・ストゥルルソン。池袋で運び屋をやっている。黒バイクとか首無しライダー、それは私だ。都市伝説と騒がれるのは好きでは無い。静かに…うん、新羅と静かに暮らしていたい。首が何故無いのか、どうして今回こうやって話しているか…それは今日は割愛しようと思う。

私は、前々から気になっているのにずっと当の本人である友人に言えないままでいる…ある事を抱えている。

新羅には「そこは触れないようにしなきゃ駄目じゃないかな。魑魅魍魎が世の中にはあるって事さ。」なんていやらしい手付きで胸を揉まれながら言われたから、言わないようにしているが…。(勿論その後新羅は殴っておいた)

でも毎回毎回気になって仕方ないんだ。私は不思議が好きだから、いや、自分も不思議過ぎる部類だとは自覚しているけれど、やっぱり気になって気になって…仕方ないんだ。



「セルティ、俺の勘違いだったら悪いんだけどよ…俺に何か言いたい事あるんじゃねぇのか?」

『へっ?!あ、いや…全然無い!これっぽっちも無いぞ!』

「?」



静雄本人に言ってしまおうって気持ちも無いわけじゃないんだ。でも…こんなこと本人には言えない。

“いつも一緒にいる、その女は誰なんだ?”

なんて。

最初に女を見たのは静雄に逢って二回目の時だった。寄り添う女は大人しく静雄の後ろについていて、随分恥ずかしがり屋な彼女さんなんだな…と感じたのだが、静雄の紹介もなかったから気にしないでいた。長い前髪で顔は殆ど見えなくて、だけど時折楽しそうに微笑んで、それでいて静雄の斜め後ろでじっとその背中を見つめている、今時珍しい…古来日本の旦那を一歩下がって支える妻のような女。

でも決定的に可笑しいなと感じたのはその次に静雄に逢った時だ。逢ったと言っても、静雄がチンピラに絡まれてキレてしまい、暴れているところに私が遭遇してしまった…という訳なんだけれど、なんとあの女が、静雄が自販機を持ち上げようとした瞬間に、静雄の身体にスーッと

溶 け 込 ん だ ん だ !

溶け込んだといいいいうか、あれは完全にひょ、ひょ、憑依ってやつだと、思うっ。怖がって無い!思い出して、ちょっと…まぁ気にするな!でっ、でも今は純粋に静雄が心配だ。見ている限りは何も害は無いようだし、もし静雄の力や回復力が女の力だとしたら今すぐ消えてしまうのは毎日のように何かしら揉めている静雄の身が危ない(池袋最強の噂も広がっているしな、静雄注意報にはびっくりしたよ…)。それより、気になるのはもう一点。あの静雄の天敵、折原臨也は女を知っているのか?ということ。知っていたなら…どうして何も言わないのか、知らないなら…教えない方が良いな、うん。



「珍しい事もあるもんだね、運び屋が俺を呼び出すなんて。…君が知りたがっている事は分かってるよ。名無しちゃんのことだろう?彼女はもうずっと前からシズちゃんと一緒さ。確か…、あ!シズちゃんが弟と喧嘩して冷蔵庫投げつけようとした時って言ってたよ。もっとも、それは憑依のきっかけで…名無しちゃんはその少し前にシズちゃんに逢っていたらしいんだけどね?でもこれが面白いことにシズちゃんは全く覚えていないし、ずっと一緒にいるのに気付いてない様なんだよねぇ!動物的な勘の鋭さは何処に行ったのやらって感じでさぁ」



知ってやがった。

でも、そうか…静雄は女を知らないのかぁ。っというか、何で私が聞きたいことが分かるんだ?!(不本意ながら)突然呼び出したのに来てくれたまでは良いが、まさか私の、新羅にも秘密で書いているブログを知っているのか?!…侮れないな、折原臨也。それに私が何も言っていないのによくここまでペラペラと喋れるものだ。こいつは本当に好きになれない。なるつもりもない。



『彼女は…その、名無しちゃん?は何者なんだ。静雄に何をしてるんだ』

「シズちゃんの力…なんじゃない?」

『何だ、そこは知らないのか』

「うん、正直微妙なところなんだよね。だって名無しちゃん自身も、自分に力がある訳じゃないのに何でシズちゃんに憑依する事で変化が起きるのか分からないって言ってたからさ」

『かかっ、か、彼女喋れるのかっ?!』

「ちょっと前に、仕事から帰ったらいきなり事務所に居たんだよ。まさか次は俺に憑依するんじゃないかって警戒して効くかは分からなかったけど一応ナイフ出してちらつかせてみたら、名無しちゃんってばポロポロ泣きだしちゃってさ?警戒も解いて、ナイフも閉まって、此処に来た理由を一応聞いてみたら…“しずくんと喧嘩せんといてください”って。爆笑しちゃったよ、あれは腹筋が千切れるかと思ったね」

『それで、どうしたんだ?』

「まぁ、とりあえず害は無いし面白かったからあれこれ聞いたさ。あ、こっからは有料で」



…そうか、彼女は名無しちゃんって言うのか。喧嘩しないでって静雄の為に泣くなんて良い子じゃないか。うん。喋れるなら…ちょっと私も喋ってみたいな。そうしよう、静雄に気付かれないようにコンタクトを何か取って、…もしかしたら同じような間柄(多分名無しちゃんも霊的な何かだよね)だから仲良くなれるかも知れない。よし、決めた。



「え、ちょっ、無視?運び屋?」



私は高ぶる気持ちを抑えて、シューターを走らせた。



















静雄が殆どいないwww
要望があれば続きを書くかも


戻る