今からちょっと昔、そんな話。
「悪いな、平和島」
「?」
「いや…名無しの事」
「あぁ、別に良いっすよ」
「少なからず女にモテたっつー事だから嬉しいべ?」
「トムさん…、名無しはそんなんじゃ、」
「でも名無しちゃんは静雄が好きなんだろー?」
「トム、名無しは単純な好きとかじゃない気がするぞ」
「単純な好きじゃないって?」
「?」
「あいつは、歪んでる。それを気付いてねぇっつーか、名無しはとにかく…何て言うか、」
「なんすか。はっきり教えて下さいよ」
「まぁまぁ、静雄。ようは…お前が名無しちゃんを預かった理由と関係あるんだろ?」
「あぁ。…名無しは、両親を無くしちまってる。それは知ってるだろ?無くしたってのは、この事件がきっかけなんだ」
「これは?」
「名前は伏せてあるが、その長女っつーのが名無しだ」
「“妻が夫を殺害し、自殺
調べによると●月●日、●●区の住宅街で妻に夫が包丁で刺されて死亡。夫の長女に対する性的虐待が原因と断定、妻は心労により自殺。調べによると家族は長男を半年前に亡くしている。関係性があるとみて長女に事情聴取し…”」
「…まぁ、名無しちゃんの事情は分かったとしても、歪んでるってのは?」
「名無しは、虐待されてたなんて思ってない。父親に愛されて育ったと思ってる。でも母親は息子も奪われ、娘も汚らわしい関係に置く父親を憎み、殺した。名無しからしたら母親の死も弟の死も大して気にならない。愛している父親を失った辛さしか残ってない」
「だからって何で静雄を、」
「俺が、俺の力が欲しいから、…?」
「平和島の力は名無しにとって父親から受けた暴力と同じだ。名無しは愛を、父親を求めてる」
「……歪だなぁ」
「俺はどうしたら?」
「何も知らないフリを」
「知らないなんてそんな、」
「知らぬが仏だ、静雄」
「……はい」
「さてと、もう一件やって帰んべ」
「悪かったな、ありがとよ」
「いえ、じゃあ失礼します」
“愛しい…私の血の人形、名無し、お前は私のだ。分かるか、同じ血が流れてる。あぁ…何て可愛いんだ、”
“父さん、愛してる?”
“痛むだろ、辛いだろ? 名無しを私が愛してる証拠だ”
“絶望こそが、”
“愛だ”
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会話文だけってのも楽しいな
叔父さん初登場w