“逢いたい”

こないな簡単なフレーズを送れんで早3日。確かに悔しかったあの試合をきっかけに、サラサラと色素の薄い髪を振り乱しながら俺を追いかけとる彼に、恋をしたんがつい一ヶ月前の青々としたフィールドの上や。このまま彼が東京に帰ってしまうやんかと慌てて滞在しとるホテルに押し掛けて、ルームメイトも気にせんで盛大に告白してしまったんが28日ぎりぎり前のふかふかベッドの上。優しく抱き締められたのが27日前になったばかりん時。

つまりは、彼を追いかけたんは俺やった。


「…どないしよか。今日は片山デーやっちゅうに。」


携帯のメール作成画面は未だに宛先を決められたまんまで止まっとる。俺は頭をガシガシと掻いて、あわよくば向こうから連絡が来たらえぇのにな、なんて都合の良いチキンな考えを胸にクッションに顔を埋めた。





“逢いたい”

こんな簡単なフレーズを送れないで早3日。劇的な勝利を治めたあの試合をきっかけに、サラサラとした黒髪を振り乱しながら自分をあっさりと抜いてはボールを追いかけていく彼に、恋をしたのがつい一ヶ月前の青々としたフィールドの上だった。このまま彼と離れ離れになって二度と逢えないんじゃないかと慌てつつ、ルームメイトへ気遣いもしないでベッドに横になっていたら、彼が部屋に突然乗り込んで来たからびっくりした。それで盛大に告白されてしまったのが28日ぎりぎり前のやっぱりふかふかベッドの上。びっくりし過ぎてしばらく動けなかったけど、震えながらギャーギャー喚いてる彼(好きなんやー!とか、とにかく激しい愛の告白だった)を俺は優しく抱き締めたのが27日前になったばかりの時。

つまりは、彼も俺を追いかけてた。それがどれだけ嬉しかったか。


「やっぱり声、聞きたいしなぁ。けど寝てるかも知れないからなぁ…。」


携帯のメール作成画面を閉じた変わりにアドレス帳から"片山さん"を引き出すものの、通話ボタンの上で指は止まったまま。俺は頭を数回振って気持ちを引き締め、彼の声が聞きたい気持ちでチキンな自分に打ち勝った。この瞬間に向こうから連絡が来たらいいのにな、なんて都合の良いチキンな考えがまた俺を攻めて来たけど気にしない。俺は指に力を込めた。




(ギャーッ、キ、キヨどないしたん!)
(…あ、寝てました?ごめんなさい、声が聞きたくて)
(!……ッ、…俺は逢いたいで)








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可愛い片山に振り回されろ清川!
そんな気持ちで書きました。
とりま遠距離恋愛はある意味膨らむ←