「一体、いつからなんだ!」


後藤の怒声が響いたクラブハウスの一部屋。スプリングが派手に軋む程の寂れたベッドでは気だるそうに欠伸を漏らす達海とジーノの姿があった。二人とも衣は纏っておらず、微かに情事を連想させる青臭い香りが恋人を起こそうと意気揚々にやって来た、普段は温厚の彼を怒りに震わせた。


「あーあ、タッツミーじゃあね。」

「ふ、ふざけるな!おい、待て!達海、お前もどうして…っ、」

「………アイツが、寂しそうだったからだって。もうしない。怒んなよ。」


素早く身支度を整えたジーノがひらひらと手を振りながら部屋を去れば、後藤は恋人へと詰め寄った。ダルそうに俯いたまま恋人が吐き出した言葉は余りにも不透明で、開いた口が塞がらないとはこの事である。

確かに最近の仕事の忙しさにかまけて構ってやれなかった非は自分にもあるだろうが、それにしてもあんまりだ。ずっと彼の背中を追い掛けて、遠い国で彼を見つけて、やっと彼を手に入れられた刹那、また彼は自分の手を擦り抜けて行ってしまうのだろうか。

後藤の常に柔らかい表情は切なげに歪み、顔を上げた達海は少し驚いた顔を見せた。


「…もう、しねーって。なぁ、後藤…?」

「お前は俺のだ!他になんてやらないし、逃がしてもやらない!やっと手に入れたんだ、お前を!」


首を傾げて達海が後藤を呼べば彼の視界は天井と後藤を映すそれとなり、肩や背中に鈍い痛みが走る。続けざまに怒鳴りながら言われた言葉は、もしかしたら昨夜自分の部屋を訪ねては小さく寂しいと漏らしたジーノが、アイツから欲しい言葉なのかも知れなくて、泣きそうな後藤を愛しく思い背中に腕を回しながら、そんな事を呑気にも考えてしまった。





(もう、しません)
(当たり前だ、)
(愛してるよ、後藤)
(達海、っ)


(幸せを分けて貰えたら)
(良かったんだけど)
(虚しさしか生まれなかったな)






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後藤はタッツミーのふわふわを捕まえるのに必死だと良い。
アイツ=誰でも=私はナッツ←
ジーノはビッチだと、正義だ。