翌日から俺達は部屋の大掃除やら、買い物やらに精を出した。二年間蓄まっていた埃やら何やらは、そりゃ頑固だった。けれど、ぶつぶつと文句を言いながら細かい所まで掃除してしまうジーノと、大雑把に埃だけ払って終わり!な俺はなかなか良いコンビだと思う。俺達は三日間を掛けて、自分達が過ごしやすい様に家を綺麗にした。最後にはワインを呑みながら自分達の健闘ぶりを綺麗になったリビングの真ん中で讃えたくらいである。


「ナッツ、もういい加減にしなよ。」

「嫉妬か、ハハハッ!」

「違うって!」


その一週間後、俺達はヴェローナの地に降り立っていた。最近世界遺産に登録されただけあって、やっぱり素晴らしい中世の街並みだった。時期も時期だからか人は少ないが、逆にタイムスリップしてきたような不思議な気分を味わえて良い。

ヴェローナは、人口27万人の都市で、アディジェ川沿いにあり、ガルダ湖の約30km東に位置している。ドイツのミュンヘン及びイスラエルのベツレへムと姉妹都市協定を結んでいるらしい。何処だよそれ…と感じる人も居るだろう。俺もWikiった時はそう感じた。

ジーノの気まぐれにより、俺の行きたかったこの地にやって来た訳で。俺達は街の象徴となっている円形競技場(アレーナ・ディ・ヴェローナ)を観たりと観光を一通り楽しみ、念願のこの場所にやって来て乳を揉んで居る訳である。

『ロミオとジュリエット』、と聞けば大体の人が分かるだろうが、俺達が訪れたジュリエッタの家と呼ばれる此処は、シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』の舞台として知られる場所である。あの有名なバルコニーもあり、近くにはジュリエッタの像が置いてある。その像の片胸が、金色なのだ。ロマンチックだと思うのだが、ジーノは凄く嫌な顔をした。


「…この二人、結局死ぬんだよね。」

「そうだっけか。」

「内容知らないで、行きたいとか言ってたのかい?」

「…Si.」

「殴りたい気分だね。」


俺達は有名なバルコニーを見上げながら、しみじみとロミオとジュリエットについて考えた。彼らはお互いを愛し、死んだのだが、俺達はどうなるのだろう。

高校時代に修学旅行で寺に行った時、住職の話の中に輪廻転生とあったが、俺達は輪廻転生を出来るのだろうか。こんなに罪を犯した俺達を、神様やら何やらが魂の甦りを促してくれるのだろうか。それにアダムとイヴじゃなくて、俺達はアダムとアダムだ。クリストもびっくりだろう。じゃあ俺達はどれくらいの時が経てば、新しく生まれ変われるのだろうか。死んだら最後、一生会えなくなってしまうのだろうか。だとしたら100年生きれたとしても、短過ぎるじゃないか。人は死ぬために生まれてくると言う皮肉屋が居るが、今はそれに頷ける。赤ん坊は産まれたくなかったから、外に出た瞬間、泣き喚くのだ。

独りにしないで!死にたくないよ!と。


「ジーノ、」

「…うわっ、何。」


何だか悲しくなってしまって、ジュリエットの金色おっぱいを揉んだ幸せなんてぶっ飛んでしまって、俺はジーノを後ろから抱き締めた。

苦しいらしく、ちょっと呻いた後に恥ずかしそうに振り返ったジーノに小さくキスを送った。





(俺はロミオみたいにヘマしない)
(僕がロミオだよ)









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なんか素晴らしいです\(^O^)/←